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ふぁんとむ†わーく(完成稿分割版)その3

    2012-03-01(Thu)

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 実を言うと、彼女に方法を考えたい、そう言ったのは嘘だった。すでに、あの時点で俺はある判断をしており、今はそれに従って行動をしている。
 人間には姿の見えない俺たちがレアの友人を遊園地に連れて行くことは不可能だった。つまり、俺たちには協力者が不可欠だった。レア曰く、物には干渉できるとのこと。なら、と思って取った手段は手紙だった。シンプルな便箋を、これまたシンプルな封筒に入れて封をする。


 宛て先は……結川まどか。彼女ならせめてお見舞いぐらいは行ってくれるだろう。そう踏んでの人選だった。いや、俺にこんなことを頼める親しい友人がいないことを責めないで欲しい。
 内容としては、いきなり遊園地云々を書くのは避け、その子の友人がしばらくお見舞いに行けないから代わりに相手をしてやってほしい程度のことだ。


 俺はその手紙を結川の下駄箱に入れ、彼女が登校するまで張り込んでいた。登校時間がそう遅くないのが救いだ。
 しばらく待っていると、案の定、昨日とほぼ同じ時間に彼女は現れた。何が待ってるとも知らず、彼女はごく普通に下駄箱の蓋を開き、そして、入っていた物を目に止めたのか、小首を傾げてしばし静止していた。


 危険物ではないと判断したのか、手を伸ばし、ひっくり返して差出人を確かめている。俺も名を隠す必要もなかったし、普通に書いたが。
「涼城くん……昨日来てなかったけど、どうしたのかな……」
 ぽつりと漏らされた言葉に俺は驚いた。いくら同じクラスとは言え、いちいち俺が休んだことを気に留めているとは夢にも思わなかったからだ。


 彼女はその場で手紙を開封するようなことはせず、そそくさと鞄に手紙をしまいこみ、それからきょろきょろと辺りを見回した。もしかしたら、俺を探しているのかも知れない。
 見回していた時間はそう長くなく、すぐに結川は自分の教室に向かった。部活の朝練をしている連中はまだ帰ってくるには早いし、この時間の教室は閑散としている、というより、今は結川と彼女には姿が見えないだろうが俺がいるだけだった。


 結川は誰もいないことをまさしく小動物の如く確認してから、しまった手紙を取り出して丁寧に封を開けた。
 便箋に目を通す表情はいたって真剣だった。読み進めるうちに難しい顔になる。そりゃ、いきなり知らない人間のお見舞いに行ってくれと頼まれても困惑するだけだろう。
 しばらく便箋から目を離さなかった彼女だが、やがて鞄から携帯電話を取り出して、操作をした。何をしているのかと思った途端、俺の携帯が鳴りだした。俺は突然のことに驚いて、慌てて取り出して表示を見る。
 この体の最大の特徴だろうか。とにかく認識されない。それは俺が所持しているものにも適用されているようで、つまり、俺が物を持って暴れまわろうが誰も認識できないわけだ。


 で、こんな時ほど助かったと思うことはなかったが、俺の目はなり続ける携帯の表示に釘付けだった。見知らぬ番号。そして、結川の方を見ると耳に携帯を押し当ててじっとしている。
 勘違いでなければ、この電話は結川からだろう。なんで番号を知ってる。教えたことなんかない。
 俺はしばらく迷ってから、留守着になる寸前で通話に応じた。
「誰?」
 第一声はそれ。そりゃそうだ。『見知らぬ』携帯の番号からかかってきた電話なのだから。すると、電話口の向こうで、少し慌てた声で、
『あ、あの、同じクラスの結川でしゅ――』
 噛んだ。俺は横目で彼女の姿を眺めながら笑い出しそうになるのを堪えた。


「結川? どうして俺の番号を?」
 正直そんな会話はどうでもいいのだが、あっさり本題に入ってしまうのは状況として不自然。彼女は目に見えて狼狽しながら、
『あにょ……』
 また噛んだ。電話慣れてないんじゃなかろうか。そんな心配が頭をよぎったが、気にしても仕方ないことだった。
『クラスのみんなの番号、集めてて』
「あ、そう。で、いきなり電話してきて何の用?」
 理由については軽く流し、惚けたふりして要件を聞く。


『手紙のことだよ。それと、昨日学校を休んだこと。心配してるんだよ。家からも連絡なかったみたいだし……今日は来るんだよね?』
「いや、行かない。用事があるからな」
『そう……うん。あたしがとやかく言えることじゃないけど、ちゃんと学校には来てほしいな。クラスメイトなんだから、心配するよ……で、用事って手紙に関係したこと?』
「とにかく行かないったら行かないからな。お前が何言おうとも、だ。ああ、手紙と関係あるよ。内容は全部読んだってことでOK?」
『うん、読んだよ。涼宮くんの友達のそのまた友達の美羽ちゃんが入院してるけど、お見舞いに行けないから、代わりに行って欲しいって。そういうことだよね?』
「ああ、あってる」


『でも、なんであたしなのかな。その……友達とかじゃなくて』
 その言葉への回答に逡巡したが、
「適任だと思ったから。それじゃダメか?」
『ううん、ダメとかそんなのじゃなくて。ただ、なんでだろう、って思ったから。そっか。あたし、涼宮くんに信頼されてるんだよね。そういうことでいいんだよね?』
 電話口の声はなぜだか弾んでいて、横目で見る彼女の表情も心なしかうきうきしているように見える。そんなに人に頼られたいのか、この小動物系は。


「ああ、多分、そうなんだと思う。お前以外考えられないから」
 それは俺の選択肢があまりに少ないから。だが、先方はそう取らなかったようで、明るい声で、
『うん、じゃあ、頼まれちゃう。さっそく、今日の放課後行ってみるよ』
「ありがとう。面倒かける」
『ううん、こちらこそありがとう。じゃあね。あ、でも、ちゃんと学校には来るんだよ。少しは大目に見るけどっ』
「わかったよ。近いうちにな」
 なんで結川がお礼? なんて思いながら通話を終え、俺は一度結川の正面に立って一度頭を下げる。見えないだろうが、一応の礼儀だ。結川の顔が緩んで見えたのは、頼られたことへのうれしさだろう。
 俺はこれ以上ここで油を売っているのも時間の無駄なので、早速次の作業に取り掛かった。

       ●

 向かった先は遊園地。市内に位置する小さなものだが、一通りのアトラクションが揃っている
 何で来たか。理由は簡単だ。下見。だが、ただの下見じゃない。子供の頃から体が弱く、手術を控えている美羽を連れ出すのは夜しかできないのだ。昼間だと、定期的に看護師が訪れるからすぐにばれる。だから、夜に遊園地を動かすための方法を調べる。それが俺の仕事だ。
 マニュアルを読むだけでは十分でないので、実際に稼働させている現場を見たりして、全てを覚えていく。
 いつの間にか時間は過ぎ、学校が終わる時間になっていた。


 結川は放課後に訪ねる予定だと言っていたから、今から行けばその様子を確認できる。
 病院のある駅へとたどり着くと、そこには地図を見て場所を確かめている結川の姿があった。どうやら、彼女もたった今辿り着いたらしい。
 歩き出した結川の隣に立って歩くが気付く気配はまったくなし。電話をかけてやろうかという悪戯心が芽生えかけたが、すぐにやめようと思い直す。


 病院へ辿り着いた彼女は、受付で部屋を確認することもなく、手紙に書いた部屋へとまっすぐに向かった。
 控えめにノック。中から、少女の声が答えた。
「はい、どなたですか?」
 いささか大人びた物言い。
「あの、お見舞いにきたんだけど。入ってもいい?」
 結川はてらうことなくそう尋ね、了承の返事を得ると扉を開けて中に入っていった。
「こんにちは。美羽ちゃん、だよね?」
「お姉さんは?」
「あ、うん。あたしはレアちゃんのお友達で、代わりにお見舞いに来たの」
 レアの名前を出した途端、美羽の顔が曇る。
「レアちゃんの……そう、ですか」


「結川まどかっていうの。レアちゃん、しばらく来れないみたいだから、あたしでなにかできないかな、と思って。話し相手くらいにはなれるよ」
「わたしがあんなこと言ったから、だからレアちゃん来てくれないの?」
 唐突に顔を歪め、涙をこぼし始めた美羽に最初こそ戸惑っていた結川だったが、やがて美羽の華奢な体を抱き締めて、
「ううん、そんなんじゃない。ちょっとね、今は遠くにいるだけ。すぐに会えるよ」
「ほん、と?」
「うん、ほんと」


 しばらくあやしていると、美羽の涙は収まり、少しだけ笑顔を見せた。そして、目は俺の方を見た。
「お兄さん、ずっと立ってるけど、お姉さんの友達?」
「!?」
 愕然とした。見えてる。
 結川も美羽の言葉に驚き、そして、視線の先を追うが、焦点が合ってない。彼女には見えていない。
「…………」
 どう切り抜けるか、一瞬だけ迷い、そして、
「お兄さんはね、魔法使いなんだ。君の願いを叶えに来た」
「まほう……つかい」
 茫然と、だが、どこか陶然と呟き、そして、笑顔をはじけさせた。
「レアちゃんと会いたい!」
 純粋無垢な彼女はそう声をあげた。俺はその言葉に応えて頷き、
「うん、その願いかなえてあげる。もう一つの願いと一緒にね」
 俺は笑いかけ、そして、壁をすり抜けてその場を去る。部屋の中からは「ほんとに魔法使いだ」、とはしゃぐ声と結川の戸惑う声が聞こえたが、俺は笑いながら病院を出た。

       ●

 決行の日取りは決めた。遊園地の設備は大概把握し終え、そのための準備も入念に行った。
 そして、結構の前日、俺は自ら結川に電話をした。電話口に出た彼女は最初こそ慌てていたが、俺が明日の詳細を語り始めると口数が減っていった。
 最後に彼女は、
「わかった。信用してるからね」
 そう言った。不安は口に出していたが、結局彼女は俺の計画に従ってくれた。信用を裏切るわけにはいかない。

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