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ふぁんとむ†わーく(完成稿分割版)その4

    2012-03-01(Thu)

・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

 翌日、俺はとある場所にいた。目の前にはいつぞやの優男。無論、彼は俺の存在になど気が付いていない。
 ここに来たのには理由があった。あの天使の羽を模った錠剤を手に入れるためだ。彼の死角をついて家探しすると、一つだけ見つけることができた。


 俺は夜になってからレアと合流すると、美羽の病室へと向かった。手筈は伝えてあるが、彼女は不安を隠しきれていない。
 レアは病室に入ると、穏やかに眠る美羽の顔を眺めて頬を緩ませていた。その様子を横目に、俺は水をコップに汲み、錠剤を溶かし込む。多分、効き目はあるはずだ。これがないと、美羽の願いを叶えられない。そして、今度こそちゃんとした形で彼女たちの願いは叶う。


「レア、のど乾いただろ。水飲むか?」
「うん、飲む」
 彼女は疑いもなく水を受け取り、一気に中身を干した。その途端、彼女の体が跳ねる。
「な、にを……」
 その目が焦点を失いかけながらも、俺のことを訝しがる表情を向けていた。俺はなにも答えず、ただ彼女の意識が途絶えるのを見守った。


 しばらくして、俺はレアに触れようとして、しかし、手はなんの抵抗もなくすり抜けた。成功した。
 後は時間通りに結川が来るのを待って、遊園地に行けばいい。足となる電車はまだ動いている。子供二人の世話をさせるのは少々酷かもしれないと思ったが、彼女にはとことん付き合ってもらおう。
 約束の時刻ちょうど。携帯が振動して着信を告げ、俺は電話を受けると同時に行動を開始した。
 障害は俺がすべて排除した。裏口の鍵を開け、警備員の巡回を避ける。そうして誘導した結川はそこに眠る二人を起こす。


 レアは最初なにが起こっているのかわかっていないようだった。だが、理解が広がるにつれ、その顔にも歓喜が広がる。美羽も親友との再会に涙を浮かべて喜んだ。俺はそんな二人の姿をずっと見て居たいと思ったが、もう一つの願いを叶えなければいけない。
 騒ごうとする彼女たちを結川が必死になだめ、行き同様、俺の指示に従って遊園地へと向かった。


 深夜の遊園地。
 無人の遊園地に所在なさげに立つ三人。俺は園内のスピーカーを通して明るく告げる。
「ようこそ、夜中の楽園へ。今宵は、貴方がたのために用意した特別なプレゼントです。どうぞ、心行くまでお楽しみください!」
 照明のスイッチ――入れた。一斉に照らし出される楽園の風景。彼女たちだけのために用意された特別な場所。
 小さな少女二人はもちろん、監督役の結川まで目を輝かせてはしゃいでいた。


「レアちゃん、お姉さん、アレ乗りたい」
 そう言って指差したのは、メリーゴーランド。俺は頬を緩め、しかし、マニュアルの手順にしっかりしたがって、安全第一で稼働させる。
 華やかな音楽ときらめく馬車に乗った三人の眩しい笑顔。


 三人はメリーゴーランドを降りた後も、立て続けにアトラクションを楽しんだ。
 やがて、楽しみ疲れた二人は、ベンチで結川にひざまくらされてすやすやと寝ていた。
「本日の魔法はあと一つ。本日は、夜中の楽園へお越しいただき、誠にありがとうございます。お帰りのさいはこちらにお乗りください」
 全ての照明を落とし、アトラクションも止める。証拠をすべて消し去った後、俺は自転車式のタクシーで彼女たちの前に現れた。


「これが最後の魔法」
 電話越しに結川へ告げる。彼女は二人を起こさないように座席に座らせ、自らも乗り込む。
 俺は三人がちゃんと乗ったのを確認すると、ペダルをこいで発進した。
 俺の姿が見えないせいで、この自転車タクシーは無人で動いているように見えるだろう。結川の視線はサドルに注がれているのがミラー越しにわかった。
 病院に至るまで、互いに無言だった。電話がないと喋れないせいもあっただろうが、それだけではない気がする。


 美羽をもとの病室へと戻し、レアも一緒のベッドへ寝かす。
 これで彼女たちは元通り。
 俺の最後の仕事はすでに終電のなくなった結川を家に送り届けること。電話でそう告げると、彼女は少し遠慮したが、結局大人しく乗った。だが、彼女は電話を切ろうとはせず、他愛もない世間話を家に着くまでの間延々とした。俺は相槌を打ったり、彼女のボケにツッコミをいれたり。


 家についた。それでも電話をなかなか切ろうとしなかった結川は、最後にこんなことを聞いてきた。
「光樹くん、また会えるよね?」
 その言葉に俺は小さな笑みを浮かべて答えた。

「    」

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