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【二次創作】翼物語

    2014-03-07(Fri)

こんばんは。

公開するか、する必要があるのか悩むこと数か月。
小説の更新に間が空いているので、繋ぎのために投下します。

とはいえ、二次創作なので元ネタを知らない人はあまり楽しめないのも事実。
まあ、そこらへんが公表するかどうか悩んだところでもありますが。
化物語シリーズという、西尾維新さまの作品のIFですね。
知ってる方は知ってる羽川翼さんのお話です。

そしてコレ、この間のオフ会の時にリクエストを受けて作ったものでもあります。
掲載をよしてほしいということであれば、早急に言ってくださいね。


-近況-
平日は仕事。ま、フリーターですけどね。
帰ってきたら、アニメの消化。これやめれば、色々とはかどる気もするけど、栄養が……! 心の癒しが……!!

休日は休日であまり自由に時間使えんので、夕方以降に途切れ途切れに使う程度。
つまり、集中して作業できひん……

こうしてみると、ただの言い訳ですね。
うん、やるべきことはきちんとやろう。小説の執筆然り。
今週末には更新したい、という願望。
お待たせしている方には本当に申し訳ないです。

なにはともあれ、小説本文は追記に。
あ、ええ、今回ばかりはこちらにおかせてもらいます。





【前夜】

「まったく、世話の焼けるご主人だにゃ」
「そういうあなたこそ、随分とお節介じゃないかしら?」

 艮倉荘というアパートの二〇一号室を訪ねた俺を予定調和的に出迎えたのは、ご主人の数少ない友人の戦場ヶ原ひたぎだったにゃ。

 彼女はいつぞやと同じく濡れタオルを手に、俺を待ち構えていた。神経質だということ以前に、予知能力があるんじゃにゃいかと疑ってしまうにゃ。

「で、羽川さんの携帯からメールを送ればいいのかしら?」

 足の裏をタオルで拭きにゃがら、ひとしきり事情を話し終えた俺にこいつはそんにゃ確認の言葉を寄越す。

「そうにゃ。付き合い始めてかなり経っているのに、デートの一つもしにゃいなんて、おかしい話にゃ」
「だったら、あなた自身でメールを打てばいいじゃない。なんで私なのかしら」
「俺は長い文章を書けにゃいし、気の利いた言葉も言えにゃいにゃ。だから、ご主人とあの人間野郎の共通の友人であるお前なら、どうにかしてくれるんじゃにゃいかと思ってにゃ」
「生憎、私は恋のキューピッドなんて役は似合わないわよ。いえ、この場合もう付き合ってるから、キューピッドは必要ないのかしらね……こういう時に必要なのはどういう存在かしら。あなた、知ってる?」
「……ご主人の知識にそれらしいものはあるようにゃ気もするが、今はどうでもいいにゃ。早くメールを打つにゃ」
「すごく色々気になるけど、まあいいかしらね。阿良々木くんはともかくとして、羽川さんにはお世話になったこともあるわけだし、これも一つの恩返しなのかしらね」

 この女の中では人間野郎がどういう風に認識されているのか、いまいちわかりかねたけど、にゃにはともあれ目的は果たせそうだった。

 戦場ヶ原は自らの携帯も取り出しつつ、メールを打つ。

「こんな感じかしらね。これから阿良々木くんの精神を完膚なきまでに打ち砕くことが出来る名文と言えるわ」
「にゃにをやってるにゃ!?」

 俺は慌てて戦場ヶ原がメールを送信する一歩手前で携帯を奪い、その内容に目を走らせる。ん、にゃんだこの微妙にずれた内容は。

「にゃんで勉強のお誘いにゃんだ?」
「あら、知らなかったのかしら? 実をいうと、もうすぐ試験なのよ。阿良々木くんの成績はもはや壊滅的でしょうから、いまさらどう足掻こうと改善するのは難しいけれど、羽川さんと一緒に勉強すれば、まだなんとか首の皮一枚で繋がる可能性はあるかもしれないし。だから、阿良々木くんへの救済と二人とを少しでも一緒にいられるようにする口実としては、十分だと思うのよ」
「俺はそんにゃこと聞いてにゃいにゃ。あーあ、とんだ無駄足だったにゃ」
「そうでもないと思うわよ」

 にゃ? どういう意味にゃ。

「好きどうし、ってのもなかなか大変みたいよ。変に意識しちゃって、あの饒舌で余計な雑学を語りたがりの阿良々木くんですら、二人きりになると羽川さんの胸が気になって気が散るみたいだし」

 それはいいとして、と彼女はご主人の貞操に関わりそうなことをさらりと流し、

「羽川さんから誘うってのも、気が引けちゃうみたいなのよ。自分の都合に巻き込んじゃっていいのか、とか変な方向に考えちゃうみたいで」

 余計な心配なのにね、と彼女は何時ににゃく優しい顔で笑う。

「だからこそ、阿良々木くんには期待していたのだけれど、彼は彼で童て――いえ、恋愛初心者だものね」
「…………」

 にゃんか、聞かにゃい方がいいこともあった気がするにゃ。

 でも、とも思うにゃ。戦場ヶ原ひたぎは二人のことを思っている。想っている。重んじている。

「じゃあ、後は送信するだけよ」

 戦場ヶ原は俺から携帯を奪い、携帯を操作してメールを送信する。しばらくの後、送られたことを示す電子音が小さく鳴る。

「…………」
「なにかしら?」

 俺がじっと顔を見つめるのを怪訝に思ったのか、戦場ヶ原は首を傾げる。本当はお礼を言うべきにゃんだろうけど……

「いらないわ。言ったでしょう。これは私の個人的な恩返しの一環でもあるの。だから、むしろ言うのは私の方なのかも知れないけど、だけど私も言わないわ。だって、これはなかったこと、だもの」
「あ……」

 余計にゃお節介には余計にゃ言葉はいらにゃい。

「おやすみさない、ブラック羽川さん」

 そういって彼女は、俺に手を振った。



【早朝】

 僕、こと阿良々木暦の朝は早い。それは平日でも休日でも変わることはない。

 そして、その早さを支え続けているのは、ひとえにファイヤーシスターズと巷で呼ばれる我が妹たちであるところの阿良々木火憐と阿良々木月火が毎朝甲斐甲斐しく、というのは客観的な感想で、僕としては喧しくたたき起こされるのだ。

 アニメ版ではエキセントリックな起こされ方が目につくようだけど、普段からそんな命の危機にさらされているわけではないことを明記しておこう。

 まあ、いつしかは二度寝してバールを振り下ろされるということもあったけれども、それは記憶の片隅に沈めておく。

 で、今日はというと僕は彼女たちが部屋を訪れるよりも早くにベッドから起き上がっていたのだ。

「ふははは――」
「なんか勝ち誇ってるところ悪いけど、気持ち悪いから死なないかな?」
「さらりと僕の死を願っていることを公言しないでくれるかな?」
「え? 私の心の声が駄々漏れだった。ごめん、お兄ちゃん。聞かなかったことにして死んでくれないかな?」
「あれ、おかしいぞ。僕はどのみち死ななければいけないルートに強制突入させられたみたいだ」

 ゲームなら、リセットできるのかもしれないけれど、いや、ゲームであっても一度選択肢を選んだのなら責任を持つべき……いや待て、僕はまだ何も選んでいないのに、強制的に死ぬルートに突入しているのが問題なのであって――

「ところでお兄ちゃん」
「なんだい?」
「朝からキモい理由教えてよ」
「月火ちゃん、言葉は正しく使うべきだと僕は思うぞ」
「じゃあ、言い直すよ。朝から私が吐き気を催すほど気持ち悪い状況になった理由を教えてよ」

 なんだかより酷い内容になったような気がする。でも、僕は兄だ。火憐ちゃんより背が低くても、それでも兄なのだ。だから、寛容でなければならない。

 だから、僕は広い心を持って答えた。

「なんと、デートに行くんだ。散々月火ちゃんや火憐ちゃんに友達いないと言われ続けた僕にも、一段飛ばしでそんなイベントが訪れたわけだ」

 極寒の、心を凍りつかせるような視線。

 あれ? もしかしなくても祝福してくれない?

「……誰なの?」

 僕の顔に張り付いた笑みと月火の凍るような視線がしばし続き、その後に妹様は小さく聞いた。

 隠し立てする必要もないし、いくらこの妹でも実際的な手出しをすることはないだろう。なぜなら、相手が、

「羽川だよ」

 そう、羽川。ファイヤーシスターズも尊敬する、そして僕の最愛の女性。

 羽川から、結婚を前提にしたお付き合いを申し込まれ、僕はそれを快諾した。

「そう……」

 なぜか、不可思議なものを見る目で僕を見つめ、そして、

「あ、でもお兄ちゃん。翼さんを不幸にしたら、どうなるかわかってるよね」

 そんなことを言った。

 だから僕は胸を張って答えた。

「そんな奴がいたら、僕自身がどうにかしてやる。たとえ、それが僕自身だったとしてもだ」
「ま、お兄ちゃんなら問題ないか。それに、選んだのは翼さんだろうしね」
「ところで、巷では僕は家を出るまでに80ページかかると思われているようだけど」
「そうなの? それは大変。でも、どうしてそんなにかかるんだろ? お兄ちゃんに朝からそんなにたいそうなイベントがあるように思えないけど」

 張本人がそれを言っちゃうかな。

 まあ、日常と言えば日常なので、自覚がないということも考えられる。

 確信犯だろうけど。それを証明するように、

「まあ、今日は引き留めたら翼さんに迷惑掛かるだけみたいだから、さっさと行ってきなよ。そして、死んできなよ」
「恋人同士のあまい楽園に行くという意味なら喜んで」
「駄目だこりゃ」

 妹に駄目と言われた。

 が、僕は寛容なので気にしない。

 意気揚々と用意済みのカバンを掴み、道を空けた月火の横を通り抜け、

「じゃ、行ってくる」

 僕はデートへと繰り出した。



【午前】

 月火にはデートの約束があるように言って出てきたが、本当はそんなものはない。

 でも、これから作るから、きっと嘘ではないだろう。

 僕は羽川へ電話をかける。

 でも、これは僕の思い付きではないし、ましてや羽川からのお誘いでないのはすでに知っての通りだ。

 では、なぜまた急に行動を起こす気になったかと問われれば、昨夜送られてきた一通の電子メール、いわゆるEメールが原因だ。

 相手は、気を遣う、なんて言葉からはややかけ離れていると言っても差し支えないであろう戦場ヶ原ひたぎから。

 短文で、至極直球に。

『羽川さんとデートしなさい』

 そんなメールが送られてきた。

 思えば、僕は別の事にかまけて羽川との時間を作っていなかったと反省している。

 その別の事が羽川のためだとしても、それは言い訳にならない。

 それに、それは羽川と一緒にいてもできることだし、むしろ力を借りたほうが効率がいいぐらいだ。

 だというのに、僕一人でやろうとしていたのは、我がままだったのだろう。

 いや、見栄と言い換えてもいい。

 おっと、己を顧みているうちに、羽川が電話に出た。

「おはよう、阿良々木くん。どうかした?」
「ああ、羽川。僕はきっとどうかしていたんだろう!」
「いつものことかもしれないけど、テンション高いね。いいことでもあったのかしら?」
「いいこと、か。僕はいつもと違って自分の力で目を覚ませたんだ。妹にたたき起こされなかったから、確かに気分は最高だ」

 だけどな、

「だけど、それ以上に気分がいいのが、羽川が電話に出てくれたことだ!」
「阿良々木くん……頭打った?」
「どうしてそうなるんだ?」

 だって、と彼女はやや間を作り、

「月火ちゃんや火憐ちゃんに起こされずに、自分から起きた時点でなにか槍でも降りそうな予感がするし、私が阿良々木くんからの電話に出ないことがあると思う?」
「前半は聞かなかったことにして、確かに羽川の言うとおりだな。僕が電話して、出なかったことはないように思う」
「でしょ? だから、そんなに喜ぶのはちょっと普段の阿良々木くんらしくないかな、って」

 そうだろうか。いや、そんなことはないだろう。

 僕は僕の行動に打てば響くような反応があれば、きっと喜ぶだろう。

 あれ? そうすると、別に羽川だけが特別じゃないということにもなる。

 これは困った。

 どうしよう。いや、どうもしない。

 羽川なら、尚のこと嬉しいというだけのことだった。

「うん、いつも通りだ。そして、いつも通りに羽川のことが好きだと確認できた」
「阿良々木くん……」

 感じ入るような声。照れて頬を染める羽川の顔が脳裏に浮かぶ。

 よし、その様子を是が非でも目に焼き付けておかなければならない。

 そのためにも、

「今から、図書館にでも行かないか?」
「え? 図書館? 別にいいけど……」

 どうして、と問うような口調。

 僕は隠すことなく。

「図書館デートってやつだ。デートできないのを試験のせいにせず、羽川と少しでも長くいるために利用してやろうと思って。名案だろ?」
「名案かどうかはともかく、私は嬉しいよ。うん、今から行くから、入り口で待ち合わせね」
「ああ」

 ぷつりと通話が切れる。

 よし、これで図書館デートの約束は完了。

 僕はマウンテンバイクを引っ張り出してきてまたがる。

 漕ぎ出す足にも、自然と力が入り、頬を撫でる風も気持ちいい。

 幸せなんだと思う。曖昧だった感情――月火ちゃん曰く、曖昧でいい――だったけど、告白されてわかった。

『結婚を前提に、私と付き合ってくれないかな』

 そう言われて確信が持てた。

 授業中にふと彼女の方を見てしまうのも、登下校中に彼女の姿を探してしまうのも、本屋でこの文章彼女が好きそうだなと思うのも、いや、この先は思い出すまい。とりあえず、そのすべてに納得がいった。

 好きだから。

 その一言で説明がついてしまう。

 月火が断言したように、それはまさしく恋だった。

 つまり、想像以上に僕は乙女だったわけだ。

 思わず全力で漕いでしまったため、図書館には想像以上に早く着いてしまった。

 と思ったら、僕が着いたすぐ後に高い足音が聞こえ、振り向くとそこには息を切らせて走ってきた羽川の姿があった。

「エロいな……」
「阿良々木くん……」

 視線が冷たい。あれ、僕何か言ったっけ?

「ふふ」

 でも、羽川はすぐに笑う。

「そういう風に見ていいのは私だけだよ?」
「わかってる。羽川の胸しか見たいと思わないし、触りたいとも考えないよ」
「もう……そういうことは思ってもきちんとオブラートに包んでよ」
「悪い。でも、それが本音だからな。だから、きちんと言っておかないと」

 隠し事はあまりしたくない。

「まあ、きちんと言葉にしてくれた方が安心できるのかな」

 じゃ、中に入ろうか、と羽川に促される。

「それで、今日はやっぱり試験の勉強を教えてほしいのかな?」
「ありていに言えばそうだな。でも、それよりも羽川に会うというのが本題だぜ?」
「ありがとう」

 まだ朝も早いということもあって、空いたテーブルを占拠する。

「さっさと済ませて、後はいちゃいちゃだ」
「いちゃいちゃするんだ」
「そう、いちゃいちゃしたいんだ」

 それが主な目的だしな。

 教科書とノートを広げただけの僕に対して、羽川はそれ以外にもいくつかの参考書を取り出した。

「やっぱり、羽川は凄いな」
「凄くないよ、阿良々木くん。私にはできることしかできないから、もっと多くをできるようにするためには必要なの」
「それでも凄いよ。僕なんか、努力をしようと思っても、どうやっていいかわからないことの方が多いんだから」

 羽川は努力の方向性を知ってる。そして、僕は彼女が努力できる人間であることを知っている。

 甘えと言われればそうなのかもしれない。

 だから、僕はなるべく頼らないようにしていた。

 それが結果的に羽川との時間を少なくしていたのだ。

 強がりはやめよう。

 迷惑もかけよう。

 その代わり、

「僕に出来ることがあったら何でも言ってくれ。僕は羽川のために出来ることを全部したい」
「何でも?」
「何でも、だ」

 ふと、『何でもは知らないわよ。知ってることだけ』という台詞を思い出してしまった。できることだけ、と言っておけばよかったか? いや、そんなに意気地ないことではいけないな。

 羽川は数瞬悩み、やがて、おずおずと、恥ずかしそうに、いや、確実に恥ずかしがりながら、

「暦くん」

 そう、僕の姓ではなく名で呼び、

「私のことも翼って呼んでほしい、な」

 ちくしょう、可愛いじゃないか!
 当たりまえだけど。

 でも、これはかなり来る。

「抱きしめさせてくれ、翼!」
「ええ!?」

 興奮して叫ぶ僕と急なことに驚く羽川改め翼に周囲から白い視線が突き刺さる。

「こほん」

 翼が我を取り戻して咳払い。僕も立ち上がりかけたその腰を椅子へと落ち着ける。

 そして、半ば勢いだったとはいえ、きちんと彼女の要求通りに名前で呼ぶことに成功していたことに遅まきながら気が付く。

 後は、これを定着させれば、晴れて、

「恋人らしくなれたって言えるのかもな」
「どうなんだろう? それはわからないけど、でも嬉しいのは確かね」
「そうだな……翼」

 改めて言おうと思うと、照れが混じる。ずっと羽川だったからな。でも、心にすんなりと馴染む。

「暦くん」
「なんだ、翼?」
「ううん、呼んでみただけ」

 なんだそれ。でも、可愛い。かわいい。カワイイ!
 おっと、衝動的に叫びそうになったが、僕は紳士で大人だ。

 子供みたいに騒いではいけない。

 うん、大人なんだから――

「暦くんの頭の中がなぜかわかって怖いけど、大人ならきちんと分別を持つこと。あと、学生だってことを忘れちゃ駄目よ?」

 なぜか筒抜けだった。

「これが恋人の為せる技か」
「わからないけど、そうならそうで嬉しいかな」
「なにこれ、この子可愛すぎ!」

 僕に関わるあらゆることで喜び、花咲くような笑顔を向けてくれる。

 この笑顔の前なら、月火に言われるまでもなく彼女を不幸になどしたくないと思う。

 まだ、色々なことがちゃんとは解決できていないけれど、それも二人で乗り越えていきたいと、そう思える。

「暦くん」
「なんだ?」
「早く勉強終らせて、どこか行こう?」

 可愛く、いたずらっぽく、猫のような仕草で翼は僕を誘惑する。

「ああ、そうだな」

 僕は時折雑学を披露しつつ、もっぱら翼に教えてもらいながら勉強をし、とりあえずキリのいいところまで進むことができた。

「そろそろお昼だね」
「デートなんだから、どこかに行こうぜ」
「うん、そうだね」

 主に僕が散らかした勉強道具を片付け、席を立つ。

「ふふふ」

 歩き出そうとする僕に翼はぴったりと身を寄せて笑う。

「歩きにくい?」

 上目使いでそんな言葉。是など言うはずもなく、むしろ、

「手をつなぎたい」

 僕は欲望のままにそう言った。

 翼は少し驚いて、でもすぐに笑い、

「こう、かな」

 慣れない手つきで僕の手を握り、指を絡める。

 指先に感じる温度、柔らかさ。

 密着した体から感じる香り、鼓動。

 愛おしいと思う。

 あの時間に合って良かったと。

 間に合うための時間を作ってくれた、今は羽川の中にいる猫に心の中で感謝する。

「ねえ、暦くん」

 囁くような声音。

 僕は翼の顔を見つめる。

「今度暦くんの家に行ってもいいかな?」
「今さら遠慮なんかするなよ。火憐ちゃんも月火ちゃんも喜ぶしな」
「うん、二人にも改めて挨拶しないと。でも、違うの暦くん」

 なにが、と聞き返す前に彼女は、満面の笑顔で、

「きちんとご両親に挨拶しておかないとって思って」

 気が早い、わけでもない。なぜなら、僕と翼は結婚を前提としたお付き合いをしているのだから。

「そうだな。なら、試験明けだ。そして、試験中はずっと図書館デートだ。そして、試験終ったら普通のデートだ」

 会うための口実なんて、いくらでもある。むしろ、なくたって会わないなんて理由にはならない。

 側にいたいから。

 好きだから。

 愛してるから。

 理由なんて、後付けだ。感情に納得するための理性だ。

 でも、恋は理性じゃない、論理じゃない。

 そんな風に考える僕を見つめ、翼は泣きそうな笑顔で、

「好き」

 さらに、

「大好き」

 僕は一瞬言葉をなくし、でも、言うべきことがあると思い、

「僕も好きだ。だから、結婚しようぜ」

 笑顔で、そう言った。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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コメント

大事に持っていますよ!

おもしろかったです!
二次創作は感情表現が楽しそうですね。
私もブログで描いてて、そのキャラにどれだけなりきれるかで楽しさが違ってくる気がします。

小説もおもしろそうですね・・・
一回挑戦してみたいです。

オフ会は今回はあえなそうですけど、また一緒に遊びたいなと思っています。

ではでは!

Re: 大事に持っていますよ![ヒデ王さんへ]

こんばんは。

面白かったですか!? 良かったです。
そうですね、二次創作はすでに魅力的なキャラを扱う物ですから、その感情や行動をどう表わすかが鍵になりますよね。
なりきることが出来れば、とても楽しいジャンルです。

ヒデ王さんなら、すでに忍とかが登場してますし、彼女たちに手伝ってもらえば……
ぜひ挑戦してみてください!

オフ会はまだ不参加に近いですけど、未定。もしかしたら、があるかもしれません。
その時は早急に連絡します。

コメントありがとうございました。

素晴らしい作品!

とても素晴らしい作品をありがとう御座いました!

遅くなってしまって申し訳御座いません!この物語の感想を書かせて頂きます!
二次創作の作品を読んだのは人生で初めてでした!来栖さんの作品は実際の小説でこそ書かれていないもののキャラクターの言動、性格、アイテムとどれをとっても納得のいくものばかりでした!細かく実際の小説を読まれている証拠だと思います!
私自身小説は情景が想像しにくい為、読むのが苦手ですがこちらは読みやすく情景も浮かんできました!最後の終わり方もとても素敵です!

リクエストに答えて頂き本当にありがとう御座いました!また、交換会もやりましょう!それでは!

Re: 素晴らしい作品![takubomay55さんへ]

こんばんは。

感想ありがとうございます。
いえいえ、こちらこそあのような形で良かったのかと心配しておりました。

実は、ボクも本格的な(?)二次創作をしたのは初めてで、最初は勝手がわからずいましたが、わからないならわからないなりに自由に楽しませてもらいました。
彼らの言動に説得力があったのなら、ひとまずは成功です。そうですね、すこしばかり入念に読み返しましたのでw

アニメもやっていますから、絵の想像が容易いのも一因ではないかと思います。
二次創作の利点は、やはり絵を想像させやすいことだと思うのです。

ラストは色々悩みましたが、やはり原作の台詞を基にした方がいいかな、ということでああなりました。
素敵と言ってくださり、ありがとうございます。

こちらこそ、イオナさんの素敵なアクリル板を頂いて、本当に感謝しています。
そうですね、また交換会を行えるといいですね。

コメント&感想ありがとうございました。

No title

公開するのに悩んだときは公開することに決めているのがLandMですが。
・・・、まあ、更新の意味合いもあるのですが。
自分の予想に反した反応が返ってくるものです。
・・・というのが率直な感想です。

LandMさんへ

こんばんは。

確かに、変に悩むぐらいなら公開してしまった方が気が楽でしょうね。
そして、悩むくらいなら更新しなさい、と。

まあ、反応はどうあれ、生存報告にはなりそうです。

コメントありがとうございました。
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BloodType:O

趣味で物書きやってる元学生。
プログラミングもするけど、そこまでスキルがあるわけでもない。

普段はぐだぐだとくだらないことを考え、よく妄想の世界で遊んでいる。
基本的に脳みそお花畑な人間。




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