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Love Flavor 005 : "これ、この間のお礼にと思って"

    2013-08-17(Sat)

こんばんは。

↓刹那さんのテーマとして勝手に借用している曲です。あんま先入観もたせるのもよくないんですけどね……


本文はいつもどおり追記に置いてあります。興味のある方、お時間のある方はどうぞ。




 鞄に今日の宿題に必要な分だけの教科書とかを詰め込む。そして、ロッカーに入れておいた紙袋を確認。うん、ちゃんと中身もあるし、汚れたりしてない。

「じゃあ、行こっか?」
「そやね」

 美汐ちゃんたちに声をかけると、すぐに返答があり、準備も完了しているようだった。

「にしても、いざとなると緊張するなぁ」
「シオが緊張とか……笑える」
「高音ちんはわしのことなんだと思っとるん?」

 美汐ちゃんのジト目に高音ちゃんは首を傾げると、

「自由人」

 間違ってはいないと思うけど。でも、彼女はそうは思わないようで、

「それを言うなら、傍若無人ちゃうん?」
「それでもいいよ」

 適当だ。さすがの美潮ちゃんも突っ込む気がないのか、軽くスルーした。

「まあ、んなことはええねん。それより、急がんと先に先輩帰ってまうんじゃないのか?」
「うん、だから急いでるつもりだけど……」

 え、何その目? まあ、確かに運動神経良くないけど、そこまで歩く速度が遅いとも思ってなかった。でも、どうやら違うらしかった。

 ということで、もう少し急いでみた。だけど、それでも二人にとっては遅いようで、というか美汐ちゃん自分より背が低いのにやけに早くない? と思う間に、半ば引きずられるようにして高校側の校門へとたどり着いた。

 中等部と高等部の敷地は繋がっているけど、帰宅するだろう先輩を捕まえるには、こちらのほうがいいだろう、との判断だ。

「まだいるといいな」
「紗夜ちんがぼやぼやしてて帰ってしもうてたら、目も当てられんへんなぁ」
「別に、ぼやぼやしてたつもりはないんだけど……」

 とはいえ、既に帰ってしまっている可能性も否定できない。待つよりも、有名人らしい白鷺先輩のことなら誰かしら知っているだろう、ということで近くにいた女生徒に声をかける。

「白鷺先輩? たぶん、まだいると思うけど……」

 ちらりと視線を投げかけた先、折りよく蜂蜜色の豊かな髪が揺れた。

 きっと、紗夜の気のせいではなく空気が変わったと思う。まるでドラマか映画のワンシーンのようだと本気で思った。

 彼女の格好は普通のPコートだったし、その下に着ているのはそこにいる皆と同じものだと言うのに、それでも仕草の一つや風が乱した髪をなおす仕草が絵になっている。別に、芝居がかっている訳でもない。

 紗夜が質問をした女生徒は白鷺先輩の姿を認めると、あの人よと言って、礼を言う暇も与えずに足早に去ってしまった。

「すごいな」

 同じ学校に通う者であっても、いや、だからこそ彼女が高嶺の存在だと認識してしまうのか。

「ボケっとしとらんと、はよ声かけえ。帰ってまうで」

 美汐ちゃんにつつかれて、紗夜は我に返る。そして、慌てすぎてあわや白鷺先輩に衝突しかねない勢いで彼女の前に立ってしまった。

 彼女は驚いた表情を一瞬したものの、すぐにフラットな表情に戻り、紗夜を見つめてくる。

 身長は白鷺先輩の方が高く、自然見下ろされる形になったが、その視線は穏やかで見下ろされているという感じは受けなかった。だが、紗夜は彼女の琥珀の瞳の奥に何かを見た気がした。

「えっと」

 そういえば、なんて言うのかなにも考えていなかった。用があるのは彼女自身ではないのだから、あまり失礼にならないようにしないといけないし。

 そんなことを考えていたら、白鷺先輩は紗夜の持っていた紙袋に目を留めて、

「そういえば、おじさんが言ってたっけ……」

 そう呟き、そして、

「付いてきなさい。案内してあげるわ」

 そう、さっさと背を向けてしまった。

 わけがわからなかったが、先輩の方はそうでもないらしく、紗夜たちがついてきているのを軽く確かめただけで、軽い足取りで校舎の中へと入ってしまう。

「えっと、案内って、どこに?」
「蓮のところに行くんでしょ? まあ、聞いた話だと名前を知らない可能性があるってことだったけど」
「その、はい、名前聞き忘れてしまって」

 道行きの途中で、彼女からかい摘んで説明を聞いたところ、どうやらくだんの蓮先輩こと胡桃崎先輩の父親、つまりあの時の運転手から遅刻の少女を送り届けたという話を聞いていたらしい。つまり、白鷺先輩は胡桃崎先輩と家族ぐるみの付き合いがあるということでもあるのだけど。

 さほどの時間もかからず、三階の教室にたどり着き、

「蓮!」

 そうよく通る声で名前を呼んだ。呼ばれた側は少し驚いた様子だ。

「先に帰るんじゃなかったのか?」
「あなたに用があるって子に下で会ってね」
「俺に用? 誰だろうな……」

 白鷺先輩は紗夜の肩を押し、教室の中へと放り込む。

「その子よ。つい最近出会ったはずだから、流石に覚えてるでしょ?」
「君、か……どうした? 車に忘れ物でもしていたか?」
「あ、いえ、そうではなくて」

 紗夜は机の間を縫って近づいてくる先輩に自分からも近づき、

「これ、この間のお礼にと思って」

 小ぶりな紙袋を差し出す。彼は頭を振り、

「いや、礼には及ばないよ。あの時も言ったが、俺の遅刻しそうだっただけ。だから、それは受け取れない」

 そう、紙袋をそっと押し返す。だが、紗夜も引くわけにはいかなかった。彼がどう思っていようとも、自分がお礼をしたいと思っているのだ。

「でも、受け取ってもらえないとあたしの気が晴れません。ですから、受け取ってください」
「しかし……」

 先輩は言いかけ、しかし紗夜が引かないだろうということを悟ったのだろうか。軽くため息をついて、

「わかった。受け取っておくよ、ありがとう」
「いえ、こちらこそ押し付けるような形になってすみません……」

 紙袋は無事胡桃崎先輩の手に渡った。これで用は済んだ訳だけど、後ろを振り向くとそこは別世界だった。その空間を形成しているのはなんと美汐ちゃんではなく、高音ちゃんと白鷺先輩だった。美汐ちゃんも蚊帳の外らしく、だが、なぜか視線はずっと胡桃崎先輩の方に向いていた。

「美汐ちゃん?」

 名前を呼ぶと、ハッとしたような顔になり、笑って誤魔化す。

「はは、少しぼうっとしてもうた」
「そう? ぼうっとしてただけならいいけど」

 紗夜は耳慣れない単語が飛び交う異空間に目を向け、

「あそこまで高音ちゃんがハッスルするって珍しいよね」
「そやね。でも、先輩と会うの楽しみにしとったしな」

 美汐ちゃんも先ほどとは違った苦笑い。だが、その目は温かい。こうなったら、気が済むまでほっとくしかないだろう。それは胡桃崎先輩の方も同じようで、支度を終えたのか鞄を手に紗夜たちに並んで立つ。

「待つんですか?」
「まあ、そうだな。彼女が先に帰ると言うのでないなら待つさ」
「そうですか……」

 会話が続かない。趣味も知らないし、共通の話題が思いつかない。

「ほな、胡桃崎先輩、ひとつ聞いてもええかな?」
「なんだい?」

 美汐ちゃんが口を開いた。先輩も邪険にせず、顔を向けて聞く姿勢だ。

「白鷺先輩ってホントにハーフじゃないんか?」
「……まあ、俺もあいつの家系を全部知ってるわけじゃないから、断言できる訳じゃないが、祖父の代まで遡っても外国の血は入ってないはずだ。まあ、あの外見だからな。疑うのもわかるさ」

 視線が自然、彼女に向かう。蜂蜜色の長い髪。そして、琥珀色の瞳。その二点において、彼女は特異と言える。さらに言うなれば、その卓越したプロポーションだろう。出るところが出て、引っ込むところがキチンと引っ込んだ体型。同性の紗夜でもため息が出るほど美しいと思う。当然、男子にとっては垂涎ものだろうな、と。

「不思議なもんやね」
「ああ、そうだな」

 感嘆とそれに対する相槌。

 そうこうしているうちに、高音ちゃんと白鷺先輩のトークもひと段落したらしい。互いにケータイを突きつけ合って、どうやらアドレスの交換をしているらしい。

「珍しく、あいつにもいい刺激になったようだな」
「ええ、なったわよ」

 花咲くような微笑。高音ちゃんも珍しくわかりやすく微笑み、喜びを露わにしている。

「よかったな、高音ちん」
「うん、付いてきた甲斐があった」

 Vサイン。

「ほな、用も済んだし、はよ行こうか。先輩、お邪魔しましたぁ」
「失礼しました」
「じゃ」

 教室を出て行く紗夜たち。それへ先輩たちは手を振ってくれた。

「ああ、じゃあな」
「ええ、さようなら。高音、あなたには後でメールする」

 紗夜たちは頭を下げ、揃って高等部の校舎を後にした。

「いやぁ、いい経験やった」
「ホント。アドレス交換できたし」

 ホクホク顔の高音ちゃん。逆に、紗夜は少し寂しくなった。

 自分じゃ、彼女の話についていけない。そういうことで彼女を退屈させているのではないだろうか。

「サヤ」
「ん?」

 肩を叩かれ、振り向こうとすると、頬に何かが突き刺さった。

「むぐ……」

 古典的ないたずらに引っかかったようだ。

「なにするのっ」
「サヤ、楽しくなさそうだったから。それと、ゴメン」

 唐突に謝られた。

「私、不器用だけど、サヤのこと好きなのはいつもだから。だから、サヤが私のせいで寂しい気持ちになったのなら、ゴメン」
「…………」

 絶句するとはこういうことか。基本、短いセリフしか言わない高音ちゃんが、紗夜のために懸命に言葉を紡いでいる。

 紗夜は黙って彼女を抱きしめた。

「うん、大丈夫だよ。あたしも高音ちゃんが楽しいのを素直に喜んであげられなくてごめんね」
「大丈夫。サヤの気持ちはわかってる」

 そっと背中に回される腕。ああ、暖かいな。

「おーい、今日わしひとり蚊帳の外な状態多くないかい?」
「それはいつもの態度が悪いから……たぶん」
「多分かいな!」

 やかましく美汐ちゃんが騒ぐ。高音ちゃんがそれをなだめているのか、火に油を注いでいるのか判断のつきかねる言葉を返し……

「いつもどおり、かな?」
「うん」
「そやな」

 紗夜たちは笑い合った。
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コメント

おお?

ついに刹那嬢も登場ですね。役者のそろい踏みってシーンで堪能しました。
そして、なんか私が想像していたよりも、この後の展開が複雑になりそうな予感。美汐ちゃんの方が蓮くんにぽ〜っとなってる?

中学生だったのは大昔のことですが、このくらいの女の子たちの「友達ワールド」の感じがよく出ています。

そして、「刹那さんのテーマ」も聴きましたよ。おや〜、この歌詞ということは、もしかして? 小説の続きが氣になるなあ。

次回も楽しみにしています。

Re: おお?[八少女 夕さんへ]

こんばんは。

ついに本編で刹那さん登場いたしました。
キャラクター的にはあと三人ほどいらっしゃいますが、既出分ではここでようやく揃ったわけですからね。

> そして、なんか私が想像していたよりも、この後の展開が複雑になりそうな予感。美汐ちゃんの方が蓮くんにぽ〜っとなってる?
あ、それは大丈夫です。紗夜×刹那×蓮の周辺で複雑な感じにはなりそうですが、美汐がどうこうというのはありません。
彼女が蓮を眺めていたのは別の理由からです。どちらかというと、彼女のお家事情的な……

この「友達ワールド」とかいった部分は想像でしか書けないので、ホントにこんな感じなのかな? と悩みつつ書いています。ですので、夕さんのお墨付きをいただいて少しホッとしています。

刹那さんのテーマですね。
結構、ほのめかす以上の歌詞になってますからね。最初これ聞いたとき、おっと、これはあまりにもハマりすぎじゃないかな、と思ったりもしました。でも、あくまでもイメージですからね?
そうじゃないと、恒樹くんが少しばかり不憫なことになりますし(笑)

次回も楽しみにして頂ければ幸いです。
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