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25000HIT記念リクエスト第三弾 『レティシア姫の熱帯夜 episode from まおー』

    2013-07-31(Wed)

こんばんは。

今回は山西サキさんから頂いた『まおーのレティシア姫と熱帯夜』です。

最近は小説書くためのエンジンがかかるのが非常に遅いです。
今回も構想はすでに頭にあるのに、それを文章に起こすまでに時間がかかり、いざ書いても数行で力尽きたりしてました。

とりあえず、これで25000HITの記念リクエストはすべて消化しました。
なので、8月以降は通常シフトに戻り、まずは『Love Flavor』から執筆していく予定です。
なんというか、本当に執筆滞ってますね……前の話が6月9日。
つまり、二ヶ月ぐらい空いているということですね。
本当にごめんなさい。

スランプというわけじゃないんですよ。
物語は浮かぶ浮かぶ。でも、それを文章に起こすのがひどく億劫だったり……
ダメですね、こんな調子じゃ。
もう少しやる気出さないと!

というわけですので、次回の執筆は少し頑張りたいと思います。
ではでは……

小説本文はいつもどおり追記に置いてありますので。興味のある方、お時間のある方は是非に……



 はしたないとは分かりつつも、私はネグリジェの襟元を摘み、パタパタと扇ぐ。しかし、いつにない暑さは打ち消せず、じっとりとかいた汗のせいで着衣が肌に張り付いて気持ち悪い。

「はぁ……」

 ため息一つ。この暑さでは、もはや寝ようと努力するだけ気力の無駄かもしれませんね。

 私は立ち上がり、外の熱気を遮断するために閉め切っていた窓を開く。途端に押し寄せる湿気を帯びて滑り気すら帯びているように感じられる生暖かい風が押し寄せてきた。

 思わず閉口してしまう。本当に、いつになく暑い夜です。

 もしかしたら、アニエスも寝付けないで起きてるかもしれませんね。どうせ寝付けないなら、話し相手がいた方が楽しく過ごせるはずです。

 思い立ったが吉日とも言いますし、早速行ってみましょう。

 ちなみに、彼女の居室は私の世話をする関係上ごくごく近くに存在いるのです。だから、私はすぐに彼女の部屋の前までたどり着く。だが、ノックもしないうちに、

「何か御用ですか、などと聞くまでもありませんね。どうぞ、お入りください」

 そう言って、アニエスは部屋に私を迎え入れてしまう。私もここまで来て遠慮する気は毛頭なかったのでお邪魔することにした。

 私の専属ということもあってか、この城に居住するものとしては珍しく個室を与えられている。他の侍従は申し訳ないけれども、相部屋ということにしてもらっている。というのも、この城は決して大きくはなく、政務を行うための表側に領域を割く分どうしても生活空間は小さくならざるを得ない。それは私自身の部屋にしても同じですけれど。

「しかし、今日は嫌に暑いですね」
「そうですね。今までの夏はこんなことはありませんでしたが」

 アニエスはポットから香り高い紅茶を注ぐ。もちろん、温かいものだ。

「ありがとう。やはり、紅茶は温かいものに限りますものね」
「シアならそう言うと思ってましたから」

 読まれてますね。アニエスは本国から付いて来てくれた古くからの親友で、そして姉のような人だ。

 紅茶を楽しむ私にアニエスは、

「しかし、シアは寝ないつもりで来たのですか?」
「そうですよ? こんなに暑くては、寝ようと思っても苛立ちが募るだけかと」
「まあ、一理ありますけど、やはり乙女なのですし、夜は寝たほうがよろしいかと思いますけれどね」
「そういう貴女だって、十分に乙女ですよ?」

 私の言葉にアニエスは苦笑する。

「まあ、そうなんですけどね」

 しばし、ゆるりとした時間が過ぎた。紅茶を楽しむ傍ら、雑談を交わす。

 だけど、

「これは思ったよりも大変ですね」

 時間の経過は思ったよりも少ない。このまま紅茶を飲み、彼女と雑談を交わしていることも十分に楽しいのだけど、でも、もっと早く時間が経つように感じられることはないだろうか。

 いえ、ありますね。

「考えていることはわかりますけれど……その前に着替えをなさってくださいね。夜中とはいえ、街を出歩くのですから」
「わかってますよ」

 私は一度部屋にもどることにして、ネグリジェから普段のドレスへと着替える。式典用の華美でゴテゴテしたものではないので、私一人でも着られるものだ。そもそも、宮中行事を行うこともないのだから、ほとんどそういった類の物は持ってきていないのですけれど。

「お待たせしました」

 待ってもいないのだけど、アニエスはそういっていつも通りのきちんとした服装で現れた。

「では行きましょうか」

 どこへ、などと野暮なことは聞かずに彼女は私をエスコートするように歩き出した。

 湿気の多い生暖かい空気の中を歩くことしばし。目的の場所にたどり着いた。

「さて、起きてるでしょうか?」
「どうでしょうね。でも、ここまで来た以上、嫌が応でも起きてもらいますけどね」

 にこらかにそんなことをのたまう。まったく、彼女ときたら。

 まあ、それはともかくとして、私はクレアさんの家の扉を控えめにノックした。

「おう」

 のっそりと現れたのはグレンさんだった。

 だが、それよりも気になったのは中から漏れ出てくる異様なほど冷たい空気。火照った体の温度を一気に奪われそうなほどだ。

「この冷気は?」
「まあ、ちょっとな……なんだ、そこにいてもアレだろう。とりあえず中には入れ」

 招き入れられた中は冷気の漏れ出る外の比ではないほど寒い。

「クレアさん?」

 奥の寝室を覗き込んでその名を呼ぶと、彼は億劫そうに顔を上げた。

「なんだ、お前か。何しに来たんだ?」
「なに、という訳ではありませんが……暇だったので」
「そうかよ。こっちはこれの処理で忙しい」

 彼の手元を見ると、青白い“何か”があった。

「なんなのですか、それは」
「これか? なんだろうな? オレも知らないが、どういうものかはわかる。とてつもなく熱い石だ」
「熱い……石?」
「そ」

 彼はそう言って、包んでいた手を解き、それを軽く放り投げる。たったそれだけのことだというのに、石は赤を遥かに通り越した高熱を示す蒼炎を上げて凄まじい熱量を伝えてくる。

 クレアさんはすぐに石を掴み直し、何かの魔法を発動する。

「周囲に冷気を集めて冷却すると同時に、熱を分散させているんだがな……元の熱量が高すぎてなかなか時間がかかる。だが、これでも最初よりは遥かにマシになったんだぜ」
「そうだったのですか……もしかしなくても、この暑い夜の正体はコレだったのでしょうね」
「そうか、外はそんなに暑いか?」
「暑い、なんてもんじゃないぞ、小僧」

 そこへ、外から戻ってきたらしいフィアさんが肩を怒らせて入ってきた。彼女は私に一瞥くれて、

「暇なら手伝え。お前だって魔法ぐらい使えるだろう?」
「ええ、まあ。あまり強力なのは無理ですが」
「まあいい。とりあえず、クレアの手を治療しろ。焼け石に水だろうが、これ以上悪化されたらたまらない」

 言われ、彼の手を改めて見てみると、ひどく赤くなっていた。

「受け流しにも限度がある。コイツはちょっとばかり辛くてな」

 珍しく、弱音に近いものを漏らしている。

 だが、私はそんなことを考えている余裕もなく、その火傷した手に対して自身に行使できる最大限の魔法治療を試みる。

 だが、やはり焼け石に水なのだろうか。治るそばからまた赤くなり、まるでいたちごっこだ。

「グレン殿。こういった場合の対処法などはご存知ないので?」
「あったらとっくにやってる」

 確かに。息子に信頼を寄せているが、危険を放置する人間ではない。これはもはや彼にも手が出せない状態なのだろう。

「でも、どうして城に届け出なかったのですか?」
「それは……」

 クレアさんとグレンさんの視線がフィアさんに向かった。私が首をかしげてどういうことかを問うと、フィアはそっぽを向いてしまう。代わりに、と言うようにグレンさんが、

「デルフィアをやって、お前さんを呼びに行かせたんだがな……」

 どうやら、彼女道に迷っていたようですね。私も子供の頃道に迷っていた記憶があるから偉いことは言えませんが。

「しかし、このままではジリ貧では?」
「意外とそうでもない。峠さえ越えれば、後は一気に片がつくはずだ」

 確信に満ちたクレアさんの言葉。

「信じてもいいんですか?」
「おいおい、俺を誰だと思ってやがる。勝ち目のない戦はしないクレア様だぞ?」

 茶化すようにクレアさんは笑い、しかし呆れた顔のフィアさんが水を差す。

「要するに、負けそうなら体面気にせずに逃げるんだろ?」
「当たり前の事言うなよ、魔王様。魔王様と違って、負けることに意味があるわけじゃないんだからな?」

 苦虫を噛み潰したような表情をする魔王。

「なにも、負けたくて負けてるんじゃない。眠らずに済むならそれに越したことはないんだからなっ」

 そうなのでしょうね。彼女にとっての敗北とは、常に痛みを伴い、そして逃れられない運命として周囲に押し付けられるものだ。

 そこにいるグレンさんも彼女に痛みを負わせた一人。胸の内を知る由もないけど、なにも思わないわけもないでしょうね。

 だけど、ここにいるフィアさんを見ると不思議に思う。自らを傷つけた張本人を前にしても、怒りも恐怖もない。

 ただ、そこにあることを受け入れているように思う。それは諦めなのでしょうか? それとも……
 いけませんね。そんなに強くない魔力だというのに、集中を乱してはさらに弱くなってしまいます。今は治療に専念しよう。

「…………」

 しばし、無言の時が続いた。まさか、私の知らないところでこういうことが起こっていたなんて。そして、偶然とは言え、フィアさんが呼びに来るよりも早くこの場にたどり着くことができた。

 治療するためには彼の手の近くに私自身の手を近づけないといけない。だから、わずかばかり漏れ出た熱が私にも来るのだが、

「少し、弱まりました?」
「まあ、そうだな」

 どうやら、本当に弱めることはできているらしい。ならば、後はいつまで集中していられるか、ですね。

 肩に毛布がかけられた。集中しすぎた上、あまりの寒さに寒いという感覚さえ麻痺しそうになってましたけど、こうして毛布をかけられると、その暖かさが心に沁みるようです。振り返ると、私の肩から手を引くフィアさんと目が合い、彼女は不機嫌な顔になってそっぽを向いてしまった。

「ありがとうございます」

 お礼はきちんと言っておこう。

「どう、いたしまして」

 呟くような声で、そう返事が返ってきた。私は思わず微笑んでしまった。

「にやけるのもいいが、間違ってこれに触れるなよ? オレならともかく、嫁入り前のお姫様の手に火傷の痕を残しちまったらどうしようもないからな」
「大丈夫ですよ。私と結婚する方はそういう事気にしない人にしますから」
「……だといいけど」

 気のない返事。でも、それでいいんです。

 何を話すでもない。だけど、同じ場所で一緒のことをしている。それがたまらなく心地よい。

 時間の感覚を喪失していたため定かではないけれど、夜が白むころになってようやく作業は終了した。

 人肌程度まで熱の収まった石を弄ぶクレアさん。

「結局、なんだったのですか、それは?」
「なんだろうな……ボクもわからないんだが、夕方空から落ちてきてボクに直撃したんだ。その時はなんともなかったんだが、しばらくしてから急に熱を持ち始めてな」
「そうだったのですか……」

 見せてもらうが、まったくもってわからない。

「もしかしたら、吸陣石ではありませんか?」
「きゅーじんせき?」

 フィアさんのオウム返しにアニエスは深く頷くと、

「本来は魔法陣の保存用に用いられる石です。ですから、空の状態でデルフィア様に衝突。その際に炎の魔法を複製したのではないでしょうか?」
「仮説としてはありえるが……まあ、とりあえず」

 クレアさんは億劫そうに寝転がり、

「今は寝かせてくれ」

 そう、漏らした。私も流石に徹夜は初めてだったので、同意。

「じゃあ、このまま寝ちゃいましょうか」
「あっ……」

 フィアさんやアニエスが唖然とする様子を前に、私はクレアさんの隣に寝転がった。

 はしたないかもしれませんが、これはクレアさんへのご褒美です。決して、私のためじゃありませんからね?
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コメント

No title

多分、続き物の登場人物が出演なさっている魔法のお話だろうと思います。
他のお話を読んでいないので、解りませんが・・。
ただ、この量の文章で前後関係がよく解らないにせよ、スーと一気読みで来ました。
暑かったので、眠れないみんなで魔法の練習?してたけど、結局疲れちゃって皆で寝転がるという微笑ましいお話でしょうか?
結構ライトな感じで明るいのが良いと思います。

     奇系のペチュより★

ペチュニアさんへ

こんばんは。

そうですね、当ブログで連載している『まおー』というファンタジーコメディの特別編です。
各登場人物の立ち位置などわかりづらかったかもしれませんね。
一気読みできたですか? それは良かったです。

あ、ちょっと違いますね。
暑かったのは魔法の暴走で、熱帯夜になっていた所へレティシア姫がやってきて、それで皆で魔法でどうにかした、という話です。最終的には疲れて寝てしまったということです。
ライトな感じにはまとめさせていただきました。

コメントありがとうございました。

おお。

こんばんは。

なんとなくそうかな〜と思っていましたが、レティシア姫がクレアにかなりぐらりときているのが、こんなにはっきりしたのははじめて?
上から目線っぽくしようとしているけれど、可愛さを隠しきれませんね。
でも、クレアもちゃんと姫を守ろうとしてくれているみたいだし、いい感じかも!

本編も楽しみにしています。って、これは本編かしら。
あ、もちろん『Love Flavor』も待ってます。

Re: おお。[八少女 夕さんへ]

こんばんは。

そういえば、今までは姫様視点で書いたのは竪琴の時の短編だけでしたから、心情とかは他の人から見た場合のしか描写されてないのですよね。
ですので、今回ので結構ぞっこんなのが見て取れるかな、と。

> 上から目線っぽくしようとしているけれど、可愛さを隠しきれませんね。
最後のくだりは特にそういう感じだと思います。すごく言い訳っぽい(笑)

クレアは恋愛感情に疎い子ですが、姫に対して何も感じないわけでもないようです。
だけど、魔王様の登場でやはり……うん。これ以上は語らないでおこう。

直接的には本編には絡まないエピソードですが、姫の心情とかその他もろもろは地続きとなっています。
『Love Flavor』の方も楽しみにしていただければと思います。(ぼちぼち書かなきゃ……)

コメントありがとうございました。

こんばんは~

リクエストに応えていただいてありがとうございます。
一人称がレティシア姫なので、姫の心の動きがストレートに読み取れてとても良かっったです。
やっぱり姫には一途な思いがあるようですが、素直に表現できないクレア。
微妙な立ち位置のフィア。それを見守るアニエス。
この4人の心の動きが読み取れるようで面白かったです。
ラストのシアの行動。姫の気紛れのようで、でもそうではないようで、アニエスの気持ち、お察しします。
熱帯夜というお題、案外良いお題だったのかな?と思いながら、とても楽しく読ませていただきました。

Re: こんばんは~[山西 サキさんへ]

こんばんは。

いえいえ、こちらこそリクエストしていただいてありがとうございます。
仰るとおり、姫の一人称なのでかなりストレートですね。
姫の場合は確かに一途なのでしょうけれど、クレアの場合は恋心を抱く以前の問題でもありますが……その辺の話は次回の通常更新以降の話でしょうけれど。
フィアは自身の立場そのものに戸惑っていますし、アニエスも主従以上のものとして見守っていますからね。

ラストのシーンは少しばかり計算もあったでしょうね。アニエスが驚くのも想定済み、といったところでしょうか。
熱帯夜というお題、結構楽しかったです。

リクエスト&コメントありがとうございます。
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基本的に脳みそお花畑な人間。




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