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ヴァルキュリアの恋人たち chapter.01 [最古参の新参者]

    2013-06-21(Fri)

こんにちは。

一週間、ですね。
うん、近日中と言っておいて、なんだか予想以上に時間がかかった……

敗因はいくつかありますが、まあ、想像していたよりも文字数が多くなってしまったのですよ。
本当は三千~四千ぐらいに収めようとしていたのですが、五千弱。
これからの更新はなるべく短くしようとしていた矢先にこれでは先が思いやられます。

まあ、何はともあれ、新キャラも登場。
しかし、未だに『ヴァルキュリア』のヴの字すら出てこないです。
働きとしては似たようなことをやってるのが一名おりますけどね……

小説の本文はいつもどおり追記に置いてありますので、興味のある方、お時間のある方は是非に!






 一瞬の浮遊感に身を包まれる。だが、それ以外の感覚は皆無だ。視覚も嗅覚も聴覚もなにも捉えない。すべてが無になったような感覚。

 だが、そのあとに訪れたのは衝突というあまりにも激しい痛みの感覚だった。

「ああ、ゴメン。言ってなかったね」

 黒のタイツにも似たズボンが目の前に、しかし逆さに映る。無論、そいつが天井に張り付いているわけではなく、穹が逆さに転がっているだけの話。

「これから予想外の出来事が起きるなら初めにそう言え。でないと、契約の話はなかったことにするぞ?」
「でも、君はここからどうやって帰るんだい? まあ、でも今のは私の不注意だ。以後は気をつける」

 確かに、痛いところを突かれた。移動手段は恐らく瞬間移動に近いものだろう。しかし、その発想に思い至り、そう確信することを自分でも些か不気味に思う。

 身を起こし、見回したそこはどこまでも続くかに見える白一色の廊下。床も壁も天井も一面の白。天井には明かりが埋め込まれていて、壁には等間隔に四角い切れ込みのようなものがある。近未来的な廊下だ。ただの想像だが。

 歩き出したオーナーと名乗ったヘルメットに追随して歩く。足音の反響はない。硬質にも見えるが、吸音する性質らしい。

 あまりにも代わり映えのしない景色に、穹は非科学的なことを確信に至らせた原因に想いを馳せた。過去のこと。今から十年程前の話。

 ごく普通の家庭に生まれ育った穹だった。

 だが、ある夏の日、寝静まった御鏡家に強盗が押し入った。しかも、その日は折り悪く蒼といういとこが泊まりに来ていたのだ。蒼は恐らく寝苦しさから水を飲みに台所に向かったのだろう。だから、居間を物色していた強盗と出くわした。騒ぎを聞きつけて両親が止めに入ろうとしたが、運悪く、本当に運が悪く犯人が振り回したナイフが父の喉を掻き切った。

 その光景に恐慌したのは母や蒼だけではなかった。犯人もまた、そのことに恐れおののき、パニックに陥った。悪夢から逃れようとするかのように闇雲に振り回されたナイフは、足をもつれさせた蒼の体を刺し貫いた。

 あとのことは実はあまり覚えていない。気付けば、犯人は心臓を一突きされて死んでいた。自身のナイフで、だ。指紋から下された結論は穹がそれを行ったのだろうということ。未成年だったことと、状況から正当防衛の成立が認められた。

 異常はそのあとだった。現場に急行した救急車によって蒼は搬送された。筈だった。だが、搬送途中で救急車ごと消滅。事故の報告もなく、夜半ということもあり、目撃情報は皆無だった。その後、数日に渡る大規模な捜索が行われたが、何一つとして見つけることはできなかった。

 母は錯乱した。それはそうだろう。目の前で行われた凶行に耐えられるはずもなく、その後の蒼の失踪は一層彼女の心を追い詰めた。

 穹の道もその時から大きく外れた。記憶になくとも、その行為が心の箍を外してしまった。自分のことを誰も知らない場所へ。強迫観念にも似た想いに突き動かされ、船に潜り込んで密入国。治安の乱れた国を中心に転々とした。矛盾しているようだが、生きたいという渇望はなかったが、生きるためには何でもした。

 それが底のない泥沼だということはわかっていた。しかし、そんな日々の中で穹はとある仕事に就くことになった。正規の職業ではない。だが、治安の悪いその場所にはたいてい転がってもいるものだった。殺し屋ではない。その真逆の警護役である。治安が悪いとは言っても、だれも取り仕切らない訳ではない。いわゆるそういった筋の偉い連中というのはいるもので、ひょんなことから穹はそんな連中の警護をすることになった。

 皮肉だと言うべきだろうか。守るだけのはずだったその仕事をこなすうちに、相手の出方が過激になっていき、いつしかそれは殺すか殺されるかへと発展していった。そうして、穹は殺すための技術を修得していった。いつしかカウンターキラーなどと呼ばれるようになったのは余談か。

「物思いに耽るのもいいけど、行き過ぎないでくれるかな」

 ヘルメットの言葉に意識を揺り戻され、過去の回想から現実に意識を引き戻した。警戒は怠っていなかったが、あまりにも無防備すぎた。

「で、ここは?」
「仕事部屋、の一歩手前の待合室みたいなものだ」

 要領を得ない説明だったが、そこは壁にある切り込みの一つの前だった。ヘルメットは手を切り込みの横にある出っ張りに手をかざした。ほとんど無音で奥に少し凹んだのち、横にスライド。できた空洞の向こうは扉の間隔を考えれば異常なほど広い。

 オーナーに続いて室内に踏み込むと、そこには先客がいた。広い部屋の中心に設えられたテーブルのと椅子のセット。四脚ある椅子のうち一つに男がだらしなく座っていた。

「おや?」

 黄色いレンズの鋭利な印象を与える造形のサングラス。髪は茶に染め、わざとなのか天然なのかわからないが方々に跳ねている。

「君と同じく、契約をしようと思っている――」
「一条っす。一条櫟(いちい)。アンタ、水鏡さんっすよね?」

 穹は一条と名乗った男の軽薄な笑みを見据えた。唇の間からちらりと覗く八重歯が印象的だ。

「ああ、すんませんっす。ちょっと知ってる顔だったからつい」
「オレと同じで裏稼業ってわけか」
「ま、そっすね。おれの場合は直接なにかするってことはないっすけど」

 仲介人、情報屋、売人、もしくはどこかの組織の幹部。いや、幹部はない。まとう雰囲気もそうだが、なにより契約の時点でおかしい。

「さて、ここまでのこのこ付いてきてなんだが、そろそろ真面目に仕事の内容を聞きたい」
「あれー、意外に呑気っすね、水鏡さん」

 表情豊かに驚いて見せるあたり、些か以上にわざとらしく、信用ならない。

 オーナーはそんな彼の態度に頓着もせず、まずは椅子に掛けるように言うと、

「では、仕事内容を説明しよう。まずはこれを見てくれ」

 空中で手を振るとオーナーの手元に薄い光る板が現れて浮かぶ。それに触れてなんらかの操作を行う。板は薄く透けているが、そこにはなんの情報も見いだせない。

 一方、一条はその様子に口笛を吹いて感激を表す。

 最後の一押しと思われる操作を終えると、白い壁の一部がモニターになった。映し出されるのは一つの広い部屋の光景。そこには、二人ずつ二組の人物がいて、向かい合うそれぞれの手元や腰には物騒な得物を携えていた。

「これ、なんすか?」
「いいから見てなって」

 その言葉の意味は程なくしてわかった。武器を持っていることから、これが戦いだということは容易に想像がついたが、しかし、それはあくまでもその武器を使ってのものと思っていた。だが、そこに映された映像は想像の範疇を遥かに超えていた。

「なんすか、コレ」

 一条がそう呟くのも無理はない。

 二組に分かれていた彼らは、接近することなく、だが、銃を使うことなく遠方の敵を攻撃した。方法はそれぞれに違っていて、一人は雷のような放電現象に近いもの。その相方は細かい氷のようなものをばらまいている。敵対勢力の片割れは炎を産み出し、その相方は恐らく風を操っていた。

「合成……じゃないっすね、コレは」

 映像を精査するように近寄ったり離れたりして検分していた彼だったが、やがてその真贋を口にした。

 ヘルメットも我が意を得たりと大きく頷き、

「ああ、これは紛れもなく現実の出来事だ。不思議に思うのも無理はないが、今からその辺の説明を仕事内容と一緒にしよう」

 オーナーは手元の光る板を操作して動画を止めると、別の情報を提示した。22枚の意味ある絵の描かれたカード。タロットの大アルカナだ。そのうちの一つ、番号においてゼロとされる『愚者』のカードがクローズアップされた。

「我々はタロットを模した名を持つ22のチームに分かれ、戦闘を主とした競争を行っている。まあ、別に戦争とかそういう重苦しい事情ではなく、ただの遊戯として、だ。で、私がオーナーを務めるのがこの『愚者』のチーム。魔術師のチームと並ぶ最古のチームだ」
「で、その最古のチームのオーナー様はどうしておれたち裏稼業の連中を集めたんっすか?」

 当然の疑問を挟むが、聞かないでもオーナーは答えただろうなとは思う。少しせっかちな正確なのか、一条は。

 オーナーも焦るな、というように抑えるような手振りで制し、

「実は先日先代のオーナーがこのチームを私に譲り渡したのだ。まあ、前オーナーのもとに集った古強者がいて、それも一緒に譲ると言われたのだが……まあなんだ。私も素人だが、どうせなら自分の選んだ人材でチームを構成したいと思ってね」
「だからオレ達を、ってわけか。まあ、そこは納得した。だが、腑に落ちないのは、なぜオレなのかということだな。正直、戦闘力ならオレ以上の連中はごろごろいるはずだし、さっきのように非科学的な手段はあいにくと持ち合わせていない」
「安心してくれていい。君たちもああいった力を身につけて戦いに望んでもらうのだから」

 胡散臭い笑みをここぞとばかりに浮かべるのは明らかに失敗だろうに。だが、そいつは言葉を続けた。

「それに、君たちを、いや、穹を呼んだのには個人的な思惑がある。今は話せないが、まあ、さっきの会話から察してくれ」

 先の会話、ね。それは恐らく蒼のことだろう。最初に問うてきたことからも、それはオーナーにとっても重要な事柄らしい。

 穹はひとまずの納得として頷く。一条も口を挟む気は内容で、手振りで次を促した。

「でまあ、最古参のチームだが、全メンバーは全員解雇した結果、あやつらの大半はほかのチームに下った訳だ。それはいいのだけれどね。しかし、問題がある」

 ピンと指を立て、同時にスクリーンにも映像、いや、文字が映る。

『就任記念タッグマッチ 日時:12月8日 場所:第3バトルアリーナ』

「明日っすか?」
「そうだ。どうやら私のしでかしたことはかなり異例らしくてな。ああ、解雇のことだよ、うん。本来なら、手持ちのコマは揃った状態で引き継ぐのが通例だから、エキシビションマッチをすぐに行っても問題ない筈だったのだがね……」
「解雇したせいで人材がいない、って訳っすね。ちゃんと考えないからそうなるんすよ」
「言葉もない。だが、今から君たち以外の人材を探している暇はない。だから――」
「その前に一つ」

 穹はオーナーの言葉を遮る。

「二つの条件を飲むなら、やってもいい」

 蒼のことも気になるが、それ以上に正直、楽しそうだと思っていた。他人にとっての非日常が日常であった穹にしてみれば、日常となってしまった世界には少しばかり飽きが来ていたのだ。だが、だからと言って簡単にハイと頷くのは今までの仕事のプライドが許さない。だから、条件を出す。飲めない条件ではないはずの二つだ。

「一つ。衣食住の他に欲しい物を供給するといったが、欲しい物の代わりに現金でくれ。二つ。今でなくてもいい。いずれアイツの情報をオレに開示すること。難しくはないはずだ」

 穹が立てた二本の指をオーナーは見やり、深く確かに頷いた。

「現金を望むならそれに沿おう。金額は別途相談する。それと……情報はどのみちいずれ知らせるつもりでいた。無論、引き受けてくれたら、だがね」
「それならいい」

 これで穹の方は決まった。一条の方は、と目を向けると、しかし返事を聞くまでもないようであった。

 それでもあえて言質を取りたいのだろうか。

「一条、君はどうする?」
「ここで断ったら、おれの好奇心を裏切ることになるんすよね。だから、当然オーケーっす。ただまあ……」

 穹にちらりと視線を向け、

「荒事はそう得意じゃないから、明日のはほぼ御鏡さんに任せると思いますがね」
「構わん。どのみち、他人の手助けは期待してないからな」

 穹の返しに、彼はそこは噂どうりなんすね、と小さく呟いたが無視しておこう。

「では、契約と力を与える段階に進もうか」

 オーナーは今までで一番胡散臭くない笑みを浮かべた。
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コメント

No title

 こんばんは。
うーーん 謎がのこるなぁ… 何が目的で 人を選びチームを作り ゲームのようなバトルを行うのか。
其れこそが ヴァルキュリアに繋がるのか…
うーーん まだまだ 謎が深まりそうですね。

ウゾさんへ

こんばんは。

とりあえず謎を振りまくだけ振りまいてほとんど回収してませんですからね。
ただまあ、作中でも述べてはいますが、このバトルは娯楽です。誰の、とかその辺の話が次回以降かな……?
ヴァルキュリアへのつながりはもう少し先になるかもしれませんね。

謎を深めつつ、さくっと更新できるといいのですけど。

コメントありがとうございました。

ペチュニアさんへ[拍手コメへの返信]

こんにちは。

お読みいただきありがとうございます。
ライトノベルぽくないですか? でも、力作だと言ってくださってありがとうございます。

拍手コメントありがとうございました。
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