FC2ブログ

20000HIT記念のリクエスト【後編】

    2013-04-21(Sun)

こんばんは。

前編公開から一週間ぐらいたちましたね……
申し訳ない。

とりあえず、本文は追記からです!






「これが――」

 絶句するより他なかった。

 森が唐突に途切れ、陽が射すそこに屹立する白銀の構造物。金属ではない。妙な滑らかさがあり、どこか生物的でもある。

「目にするのも初めてか?」
「ああ」

 問いかけにはそんな言葉しか返せなかった。

「本来、遺跡探索は入口を見つけることから始まるが、今回に限って言えば、一度来たことがあるのでな。調べはついている」

 懇切丁寧なことだ。しかし、説明を行いながらも周囲への警戒は怠っていない。年若く見えるが、どこか熟練の傭兵の雰囲気を漂わせている。

「ここだ」

 そう言って指差す先には何もないように見える。が、近づいてよく見てみれば、細い切れ目のようなものが連なり、大きな四角を描いている。

「他の遺跡も似たような感じなのか?」
「そうとも言えんな。他では地面に埋まっておったりと様々じゃったからの」
「そうか」

 てっきりカロンが答えるのかと思ったら、アリスと名乗った精霊が口を開いた。

「開けるが、注意を怠るなよ」
「ああ」

 カロンは壁に背を預け、手を扉へと這わす。しばらく探っていたが、何かを見つけたのかぐっとそれを押し込む。すると、扉から空気の抜けるような音が漏れ聞こえ、やがて内部へと引っ込む。扉はその後横に滑って姿を消した。

 見たこともない光景に立ちすくんでいると、後ろから肩を叩かれ、

「入るぞ」

 そう促された。

 俺は腰から長柄の長剣を抜き、リックという長身の男に続く。後ろからは臆した様子もなく女性たちが続き、最後にカロンが入って扉を閉ざした。

「灯りは?」
「オレが」

 リックは腰からランタンを外すと、ガラスを軽く弾く。すると、瞬く間に火が灯り、辺りを明るく照らし出した。

 廊下は狭くもなかったが、大して広くもなかった。両腕を満足に広げることはできそうもないが、人がすれ違う程度はできそうであった。壁の材質は知る由もなかったが、外壁同様の光沢のあるもの。そして、上部には僅かに透明な出っ張りがある。

「あれは?」
「この遺跡が稼働していた当初はあれが灯りだったようですよ」
「あれが……?」

 とてもじゃないが、火を入れられそうもない。

「ふふ……昔はエネルギーを直接光に変換していたみたいです。今で言う、光系統の魔法のようですが」
「なるほど」

 ミリアの親切な答えに感心していると、先頭にいたリックが歩き出す。

 遺跡は外部もさることながら、内部にも驚かされた。動く廊下に自動的に開閉する扉。透明度の高いガラス。滑らかな曲線を描く天井。灯りが点っていないのはそのための力を伝わせる管が傷ついているらしい、とのことだった。無論、それは明かりに限った話ではなく、要所要所で動かない扉があるなどして、迂回路を探しつつ中央部を目指す。

 小一時間も歩いた頃だろうか。先頭のリックが足を止め、皆に静かにするように伝える。

「何か聞こえるか?」

 最後尾のカロンの問いかけにリックは注意深く耳を済ませながら、

「聞き間違いでなければ、獣の足音がした」
「そうか。それが目指すものかもしれない。警戒しつつ前進だ」
「わかった」

 ランタンを左手に持ち替え、腰から長剣を引き抜く。気負いもなく、ぎこちなさもなく、手馴れた様子だ。

「お前も用意しとけ」
「ああ」

 俺も言われて斧を背中から抜く。

 野盗による商人襲撃はいつの世も変わらずあり続け、冒険者はそんな彼らの用心棒として雇われることが多い。俺もそんな例に漏れず、気を張り続けて警戒することは苦ではなかった。だが、それは人間が相手であり、行動が予測できるからこそなのだと思い知った。

「殺意を探れ。それが一番早い」

 忠告に従い、物音そのものは意識から外し、血に飢えた者の息遣いを聞き取るように努める。

 しかし、警戒もむなしく、というべきか敵襲はなく、あっさりと中央部につながると思われる大扉までたどり着いてしまった。

「この中だな」

 俺には静寂にしか思えないが、耳を澄ませたリックは何かを捉えているらしい。

「総員戦闘準備」

 カロンの号令のもと、精霊を除いた全員が武器を構える。

 一拍の間のあと、

「突入」

 言葉と同時に大扉が開かれ、俺たちは中へとなだれ込んだ。獣の迎撃を予想していた俺だったが、

「なぁ~ごっ!」

 やけに野太い、しかし、確実に猫の鳴き声で何かが鳴いた。

「あ?」

 暗闇に光る二つの円。

 のそり、と円が動き、頭上高くに移動。ランタンを掲げ持つリックが奥に光を届かせようと手を伸ばす。

 果たして、そこにいたのは、

「デブね」

 容赦ない言葉を浴びせたのはツキノという東方の女。

「せめて肥えていると言ってくださいませんか? 流石に直接的すぎるかと……」
「何言ってるの? 化け猫相手に言葉で遠慮してどうするのよ」

 彼女の言ってることは至極真っ当なはずなのだが、どうもデブと言い放ってしまうのは気が引けた。

 そう、そこにいるのは身の丈4メートルは越そうかという巨大な猫。大きいがゆえに、声も野太くなってしまっているのだろう。まあ、それはともかく、

「これ、倒すのか?」

 魔族の体力やその他もろもろは知らないが、知らなくてもデカイ生物との戦闘は避けたい気がする。

「…………」

 軽い足取りで先頭に立ったカロンは見上げんばかりの大きさの猫を睥睨し、嘲笑うように鼻を鳴らした。

「まさか、こんなふざけた結末だとは思ってもみなかった。こんなもの、叩き潰すまでもない」

 彼は武装である手甲を外す。

「おい、グレン。お前手鏡を持っていたよな?」
「ん? ああ、持っている」
「そいつを通してこのデカブツを見てみな。呆れて笑いも出んぞ、きっと」

 戦う意思もなさそうな彼はそう言い捨て、その場に座り込んだ。

 その間、化け猫がなにをしていたかというと、正直に言うとなにもしなかった。じーっとカロンの動きを追い、喉をゴロゴロと鳴らす。

 ああ、なんでこいつ喉鳴らしてるんだ? まったくもって獣の唸り声とは程遠い、その音は言わずともしれたものだ。

 俺は鞄にしまった手鏡を取り出して、かざす。

「…………」

 カロンの言うとおり、そこにはあきれ果てた光景が映っていた。ユウも俺の手鏡を覗き込み、」「やっぱりね」

 と、納得の呟きをもらす。

 鏡に写っていた光景はというと、

「猫だらけ」

 ヨダレを垂らしそうなミリアはともかくとして、たしかにその通りだ。そこにはびっしりと、猫が身を寄せ合って、というか、じゃれあっていた。

 魔法は鏡に映らない。魔法の現象は人の認識の上に成り立つものであり、光という物理世界しか映さない鏡には魔法は映らない。変装の魔法を暴く最も簡易な手段としても知られているほどだ。

「で、どうするんだ?」

 鞘に剣を収めたリックは暇を弄ぶカロンにそう問いかける。

「どうもこうも……ここに魔族はいないんだから、依頼の執行も何もないだろ。遊びたければ遊んで、しばらくしたら帰るぞ」
「……そだな」

 リックも気落ちしたように座り込み、その代わりというべきか、ミリアが杖を投げ捨てて猫の群れへと飛び込んだ。

「ねこーっ!」
「にゃー!」

 人間が物珍しかったのか、格好の遊びの道具になった彼女はしかし、実に幸せそうな顔をしていた。

「しかし、どうしてこんなに猫が?」

 俺の疑問はそれに尽きた。カロンはあくびをしながら、

「遺跡ってやつは、精霊が跋扈した時代に自衛のための要塞として作られたものだ。ならば当然、民草はともかく、兵士が飢えないように作物や食料を自給できる仕組みを整え、兵糧を外部から断たれても大丈夫なようにしてあるものがほとんどだ。今回はその一部が生きていて、たまたま入り込んだ猫がそれを餌にしていたんだろ」
「なるほどな」

 一息に説明を行った彼は今度こそ疲れたのか、座るすらやめて寝転ぶ。その様子を見ていた猫の一部が寄っていき、格好の寝床と思ったのか、次々と彼の上へと登っていく。

「き・さ・ま・ら!」

 流石に量的に限度を越したのか、しばらくはほっといた彼であったが、猫を振り払って起き上がる。

「んみゃー」

 それすらも遊びと勘違いした猫たちはさらに数を増やし、じゃれ付き始める。

「いいだろう。私と遊びたいというのなら、精根尽き果てるまでいじり倒してやろうじゃないか」

 さっと振った手の中にはいくつかのボールがあり、カロンはあろうことか、それを俺の方に向かって全力で投げた。

「っ!?」

 顔の横を通り過ぎて、ものすごい風が巻き起こる。猫は俺の背のほうにある壁で跳ね返ったらしいボールを追いかけて、押し寄せてきた。

「おい、待て!」

 結果から言うと、猫たちは動くものならなんでもいいらしい。標的はいつのまにかボールから俺へとすり代わり、体力が尽きて倒れ込むまで走り回る羽目になった。

「単体なら可愛いですけど、ここまで集まるともはや凶器ですね」
「だよねー」

 部屋の隅でじっとしていたユウとカエデの意見は至極もっともだ。しかし、同意したくても、体を動かす気力がない俺は遊びをせがむ猫たちの前足に蹴られ続けるだけだった。



 遺跡を探検できたのはこの上なく有意義だったのは認めよう。だが、ある意味凶暴化した獣や盗賊を相手にするよりも疲れることがあるとはこれまで終ぞしらなかった。

 まあ、はっきり言うと、知りたくもなかったが。

 今回のこれは、数の暴力というものを思い知った貴重な思い出になることだろう。

【完】
関連記事

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

こんにちは

あはははは。
なんかいいなあ。このラスボス(?)がネコ集団だったってオチ。
こう前後編でおさめるのに絶妙の軽さで、お題の使いかたも、パーフェクト。しかも読んだ後が妙に爽やかです。

よし、これからグランベルを通読します!
(って、まだ読んでいなかったのかって話ですが)
この世界観に付いていきたくなってしまいました。
お父様グレンの活躍も今後楽しみにしています。
よし、次回もリクエストキリ番、狙うぞ。

素敵な作品をありがとうございました。

No title

盛り上げるだけ盛り上げておいて、これでしたか!
最初から何が出てくるのか成り行きを見守ってきた読者としては大笑いです。
こういうのも有りですね。
このチームの面々はまだまだ活躍の余地のありそうな個性的な面々ですので、本編のどこかの場面で出演して、活躍することを期待しています。
特にユウなど。
サキはアリスがいいですねぇ。
ご厚意に甘えてなにかリクエストしておいたらよかったかな?
また何か機会がありましたら狙います。

Re: こんにちは[八少女 夕さんへ]

こんばんは。

せっかくの記念短編なので、ハッチャケさせて頂きました。
お気に召したようで幸いです。
化物がいると思って警戒しつつ進んだのがアホらしくなるようなオチを目指しました。
世界観を説明するアイテムとして鏡は非常にありがたいお題でもありました。

いえいえ、ゆっくりでも読んでくださるならそれ以上に嬉しいことはないです。
次回『グランベル魔法街~』更新時に世界観の説明はほとんど出す予定です。

お父様もぼちぼち活躍させつつ、『まおー』の方も書き進めて行きたいと思います。

リクエスト&感想どうもありがとうございました。
次回のキリ番は22222にしましょうかね?

山西 左紀さんへ

こんばんは。

はい、盛り上げるだけ盛り上げて、一気に落としました。
脱力していただいたり、苦笑いでもしてもらえたなら目論見は成功です。
『まおー』の番外編として書いたので、やはりシリアスは目指すべきではないと思い、このようなアホらしい結末となりました。

まだ未定ですが、恐らくまたどこかで登場する機会もありましょう。
ユウやアリスは個性的ですし、あの世界観にはぴったりですから、なるべく早い登場を願いましょうか。
それに、アリスを気に入っていただけて嬉しいですね。

ええ、ええ……本当にリクエストしてもらっても良かったんですよ?
では、次回はゾロ目の22222にでもやることにします。
およそ一ヶ月後ぐらいですかね、きっと……

感想でどうもありがとうございました!

No title

この前、来た時におめでとうコメを書いたのに消えている。
・・・・
なので今更ですけど

v-30820000HITv-314
おめでとうございます。
努力の賜物ですね。
これからも地道に辛抱強く続けて下さいね。

ぴゆうさんへ

こんばんは。

そうなのです、あの夜に来た2つのコメントが消えてしまっていて……
返事はしたのですけれどもね><;

どうもありがとうございます。
ぴゆうさんをはじめとする読者の方あってこその2万です。
こちらこそ、感謝の念が絶えません!
最新記事
カテゴリ
最新コメント
プロフィール


Author:栗栖紗那

FC2プロフィール



BirthDay:5/8
BloodType:O

趣味で物書きやってる元学生。
プログラミングもするけど、そこまでスキルがあるわけでもない。

普段はぐだぐだとくだらないことを考え、よく妄想の世界で遊んでいる。
基本的に脳みそお花畑な人間。




最新トラックバック
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
1455位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
ライトノベル
64位
アクセスランキングを見る>>
RSSリンクの表示
リンク



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブロとも一覧

アスパラグリーン

執筆と脱線の日記

旅の空でいつか

Debris circus

Fakelore Maker

いえのコップは使えない

移ろひ

満身創痍

玩具箱を引っくり返したッ!!

ピナフォークの残念なブログ

からくり童子 風のジード

展示中。自作ラノベ&詩!!

リツギのラノベ妄想でいず!

ナマクラ!Reviews

気ままな雑記帳

ピクルスの味

兎の読書週間

凛音天青

おさんぽ日和

星たちの集うskyの星畑

百鬼夜行に遅刻しました

Take it easy!!!!

smooch♪

scribo ergo sum

H0nNe96の雑記