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20000HIT記念のリクエスト【前編】

    2013-04-15(Mon)

こんばんは。

2万HITの折にブロともである八少女 夕さんからいただいたリクエストです。
内容は『キャラはお父さま(クレアパパ)で、お題は「鏡」ってのはどうでしょう?』でした。

少し悩みまして、どうせだからいろいろ仕込みました。
で、分量が思ったよりも多くなりそうだったので、前半と後半に分割。

今日のところは前半のみの掲載となります。

では、本文は追記から!








「にーに、ホントに行くの?」
「ああ」

 厚い革で作られたブーツの紐を結ぶ背に、妹が声をかけてきた。

「でもなんでよ。ここでだって、十分に暮らせるでしょ?」

 それは何度目の問いかけだったろうか。俺、グレンが旅立ちを決め、そのことを家族に話してからというもの、妹、カレンはその問いを幾度となく繰り返してきた。俺の答えはいつも決まっていた。

「世界が見たいんだ」

 そう、半ば定型文にもなりかけた言葉を発すると、カレンはこれまたいつもどおりに悲しみを浮かべる。

「どうしても見なきゃダメなの?」
「どうしてもだ」

 小さくもないが決して大きくもない村で育った俺にとっては、世間はあまりにも狭すぎた。見知った人、変わらない風景。それがかけがえのない日常であることは理解できる。しかし、外があるとわかって、その場にとどまり続けることは、好奇心に溢れる若人には無理な話だった。事実、俺を除いてもすでに4人、この村を出立している。

「そう……」

 カレンと俺はいつも一緒にいた。彼女は俺に懐いていてくれていたし、俺もそれが不快ではなかった。だが、俺をこの場に引き止める理由にはならない。

「じゃあさ」

 背中に隠していた手を出す。そこには小さな手鏡が握られていた。綺麗な模様が彫刻された彼女の数少ない宝物。以前に訪れた行商人から親に頼み込んで買ってもらったものだ。

「これ、ワタシだと思って持ってってよ」
「それ、なにか違わないか?」
「んむ? あれれ……そういえばそうかも」

 寂しがっているのはカレンの方で俺じゃない。そのことを指摘すると彼女は今気がついたとばかりに手を打った。

「でもいいや。にーにのそばにはいつもワタシが付いてるよ、ってことで。それに、それをにーにが持っててくれるなら、ワタシも旅に出たような気分になれるかもだし」
「そうか」

 拒むのも気が引けた。俺は素直に手鏡を受け取ると割れにくいように荷物の中の衣服と衣服の間に入れた。

「ま、にーにがそれを使う機会なんてないかもだけどっ」
「…………」

 それは俺の熊のようにゴツイ外見のことを言ってるのだろう。よく彼女は、『ヒゲが生えるようになったら絶対熊みたいになるよね』、などと言ってるぐらいだ。否定はできない。しかも、そろそろヒゲが伸びてもいい年齢である。

「じゃあ、行ってくる」

 荷物を背負い、立ち上がる。

「うん。帰ってきたくなったら、いつでも帰ってきてもいいんだからね。あ、それとおかーさんとおとーさんから伝言。拾い食いだけはするな、って」
「オヤジ達……」

 言われなくとも、そんなことはしない。

「お前も、元気でな」
「…………」

 カレンは少しだけうつむいて、目元を手でこする。しかし、次に上げた顔には満面の笑顔。

「にーにもねっ!」

 雪が溶け、山野に若芽が芽吹く頃、俺は冒険に出た。

       +

 旅立ちから数年。当初は少年の域を出てなかったが、今ではすっかり青年である、と俺自身は思っていたが、周囲から見ればまだ若造であることに変わりはないらしい。まあ、体つきがゴツイので、甘く見られることはなかったが。

 主に街から街への旅にも慣れ、そろそろ遺跡というものに興味を持ち始めた頃のことだった。

 街で、街道沿いにある森林の奥深くに小規模だが遺跡があるとの情報を得て、向かった先。整備された道のすぐそばまで迫る鬱蒼とした森は場違いにも感じるほどだった。足を踏み入れて小一時間。代わり映えのしない景色に進んでいるのか、はたまたもどっているのか。もしかしたら、迷っている可能性すら否めなくなり、ちょうど座れそうに張り出した根を見つけて腰かけた。

 重い荷物は下ろし、中からなんとはなしに手鏡を取り出す。時に獣に襲われ、時に盗賊に追い回され、幾度か荷物を取り落としたことがあるにもかかわらず、鏡はひび割れもせず、装飾も一切欠けていない。そして、思いのほか手鏡の出番は多かった。身だしなみを整えるといった本来の目的とはやや違うが、直接見るのが難しい箇所の怪我を見るのに使ったり、盗賊から逃げる際に手鏡だけを覗かせて進路を確認したりなど、意外に役立っていた。

 耳を澄ますと、カサカサと虫が朽ちた葉の間を這いずり回る音や、小動物が木々を渡り歩く音も聞こえる。だが、重く折り重なる上に、外周から程遠いがゆえに風が通らず、枝葉が揺れることはほとんどない。また、火が刺さないためか、地面は深く苔むしていた。歩く際にはちょうどよい緩衝となってくれるが、たまに足を滑らせそうになる種類のものもある。だいぶ見分けはついてきたのがまだ救いか。

 手鏡を片手に水筒を探り、水を呷っていると、柔らかいコケを踏みしめる、しかし確かな足音が聞こえてきた。それは断続的に近づいてきており、金属が擦れるような音も混じる。

 がさり、と垂れ下がっていた枝を退ける音に続いて、黒い影がぬっと木陰から姿を覗かせた。

「あ?」

 先に声を上げたのは闖入者の方で、黒い影のようだと思っていたのは全身を黒い長い衣装で包んでいるからだった。フードの影から見える顔は年若いもので、瞳は氷を思わせる淡青色。やや長めの前髪は陽の射さないこの場ではほとんど黒に近く見えるほどの暗い紫色。

「迷子か?」

 問いかけの声はぶっきらぼうにも聞こえるが、不快ではない。

「いや、この先の遺跡に行こうと思ってな」

 目的を隠す理由もなく、素直にそう答えると彼は「そうか」と頷き、遠慮する様子もなく近寄ってきて幹に寄りかかった。その時になって気がついた。男の両腕は長い鎖で繋がれており、彼の身動きに合わせて金属的な音が鳴り響く。鎧の音かと思っていたら、違っていたらしい。

「遺跡ね。まあ、冒険者の暇つぶしにはもってこいか」

 彼も腰に下げていた水筒から水を飲む。俺の視線が鎖に向いているのを悟ったのか、

「言っておくが、脱走犯ではないからな」
「その心配はしていない。犯罪者なら、そんな長い鎖につながないだろ?」
「それもそうだな。拘束の意味がまるでない」

 喉の奥で笑い、それから彼は視線を俺の全身へと向けた。

「ゴツイ野郎だ。ヒゲが生えてるから、余計に熊みたいに見える」

 言葉に遠慮がない。

「ところで、遺跡に行くと言っていたな。なら、少しばかり手伝ってくれないか?」
「手伝い?」
「そうだ」

 フードを外して顔を露わにすると、

「最近、魔族と俗に呼ばれる第三種族の連中がはびこっていてな。この先の遺跡にも少しばかりガラの悪い連中が巣食っているらしい」
「魔族が? そんな話は聞かなかったが」
「冒険者には言わないんじゃないか? 腕の良さ、それも含めて冒険者と見るのが通例だ。それに、遺跡にはもとより精霊用の防護機構がある。そいつの誤作動もろもろ含めて、危険がいっぱいってわけだ。今更魔族がいたところで大して変わらんだろ」
「初耳ばかりだ……」

 どうやら、勉強不足だったらしい。男は肩を竦めて、

「なら、今回は講師付きの勉強だと思ってくれればいいさ。いきなり遺跡に飛び込んで死なれるのは寝覚めが悪いし、目も当てられないからな」
「助かる」

 興味本位で飛び込むのは危ないということはわかっていたが、実際問題どの程度危険なのか、皆目見当も付いていなかった俺には渡りに船だった。

「そうだ。短い時間でも一緒に暴れるんだ。名乗っておこう。私はカロン。しがない魔法使いだよ」
「俺はグレン。冒険者だ」
「よろしく、グレン」

 すっと差し伸べられた黒の手袋に包まれた手を握り返す。

 そう遠くもない位置から賑やかな声が響いてきている。

「来たか」

 カロンは声の方向を一瞥する。

「仲間か?」
「腐れ縁と言ったほうが正しい気もするな」

 しばらくもしないうちに姿を見せた一団はなんとも奇妙なものだった。第一に、女性の比率が多い。いや、今この場にいるカロンを除けば、男はただ一人。よれたシャツを着た長身の男だ。

「おい、カロン。さっさと一人だけ行くんじゃねぇよ」

 頭を掻き、そして、腰掛けていた俺に気づいて視線を向けてくる。

「そいつは?」
「遺跡に初めて行くんだと。私達の雑用を手伝わせる代わりに、遺跡の注意点などを教えてやろうと思ってな」
「まあ、いいけどよ。冒険者なら足でまといにはならんだろうし」
「私はどっちでもいいわ。まあ、男手があったほうが助かるかもしれないわね」

 女性にしては背が高く、そして特徴的な黒髪と黒瞳を持っている。この近辺ではあまり見かけることのない、東方人であるようだった。その隣に立つ少女もまた、髪こそ茶色いが、瞳は吸い込まれそうなほどの黒。両者の共通点はそれだけでなく、

「それ以上何も考えない方が身のためだぞ」

 そう忠告を受け、俺は思考を停止した。周りを見回せば、さらに少女が三名。小柄な二人と平均的身長が一人。小柄な者のうちの一人は身の丈に合わないような杖を所持しており、しかし、手に余っている様子はない。もう一人は……
「なんじゃ、ニンゲン」

 不遜な、ともすれば生意気とも言える声音でそう言い放つ彼女はしかし、まさしくこの場で一番の異形である。姿かたちは人間のそれに酷似しており、その部分だけを見れば美少女と表するのを躊躇うまい。しかし、その背中から生える枝にも似た器官は彼女が精霊であるということを伝えている。枝の先と先を橋渡しするように赤い稲妻に似た光が掛かり、周囲のほの赤く照らす。朱の瞳は射抜くような力を持ち、俺を睥睨する。

「いや、俺は……」

 言葉が続かない。とある出来事が起こって以降、比較的精霊は人間に歩み寄ったとは言え、それでも存在の希少さゆえに出会うことは希だ。そもそも、生活圏が人と重ならない場合が多い。

「名は?」
「グレン」
「そうか。グレン、そなたの響きは力強い。そう、怯えて音を乱すな」
「怯え……?」

 己を顧みれば、体は強張り、喉は先程水を飲んだばかりだというのにカラカラに乾いていた。

「あんまり威嚇してやるなよ、アリス」
「威嚇? わしは何もしとらんぞ」

 カロンに窘められ、頬を膨らますさまは正しく普通の少女のものだ。

「あたしの存在が薄くなっている気がする」
「もともと薄いじゃろ、お主」
「ヒド! 今度、アリスちゃんに美味しいお菓子を売ってるお店教えてあげようと思ったけど、教えなくてもいいよね……」
「ちょっと待て! それはちょっと――」
「ユウ、アリス」

 カロンが名を読んだだけで、二人は黙った。

「これが私達の一団だ。短いあいだだが、仲良くしてやってくれ」
「ああ」

 やや気圧された。その後、各自から簡単な自己紹介を受け、小休止を取ったあと、遺跡へと歩を進めた。
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コメント

No title

こんばんは〜。

お父様が若かりし日の冒険ですね!
正統派ラノベ! 魔法使いや妖精たちがぞろぞろ出てきましたね。
前後編だけで終わらせるには惜しいとても個性的な面々です。
「ユウ」もいる!
みなさん、本編にも出てくるのかしら。
そして、鏡も既に登場。後半ではどうなるんだろう?
続きを楽しみにしていますね。

八少女 夕さんへ

こんにちは。

はい、お父様の若かりし頃の冒険の一つを今回は書く事にしました。
魔法使い(カロン)たちは『グランベル魔法街~』からの出演ですが、世界はもともとつながってますしね。
今回はそんな彼らとひょんなことから遺跡を探検するということで。『グランベル魔法街~』の時間軸から見れば、未来の話です。
この前後編だけだと確かに、魔王討伐やアーシャとの出会い等々、書きたいことは山ほどありますが、それはなるべく『まおー』の本編に回そうとも思ってます。
ユウはあいも変わらずカロンについて回ってますから。カロンいるところに彼女あり、です。
本編に出すかどうかはちょっと悩んでおります。とある方は出すことが決定しているのですがね……

お題の鏡はもう少し出番があります。後半は……まだ執筆中というね。
遅筆で申し訳ないです><;

コメントありがとうございました。

No title

 こんにちは。
うーーん 正統派ラノベ!!!!
でも 抑えた感じの文章が 読みやすい。
其れに 会話文が多い為 性格が掴みやすい。

鏡は 後半で 鍵となって活躍するのかな 後半 待ってます。  

ウゾさんへ

こんにちは。

キャラクター小説というくくりではまさしくラノベでしょうねー。それが正統派なのかは自身ではよくわかってないですが><;

グレンお父さんの性格的に、心の中でぶつくさ言わないので、若干一人称にしている意味がないかなぁ、なんて思ったり思わなかったり。ただ、『まおー』本編に合わせて一人称にしてみた次第。

『グランベル魔法街~』の方まで読んでくれているとは限らないですからね。
そういう意味では、性格を簡潔にわかりやすく書くには会話を使うと便利!

鏡は……そうですね。楽しみにしていただければと。

コメントありがとうございました。
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趣味で物書きやってる元学生。
プログラミングもするけど、そこまでスキルがあるわけでもない。

普段はぐだぐだとくだらないことを考え、よく妄想の世界で遊んでいる。
基本的に脳みそお花畑な人間。




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