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鮮花伝(仮)part1~3までまとめました

    1988-12-31(Sat)

こんばんは。

なんか思い付きで書き始めてしまったシリーズ。
なんか、節操もなくあちこちに手を出して、物語がごっちゃになったらどうしよう、とは思うものの、しかし、モチベーションが高いうちに書き出しでも書いておけば、後から見てそのモチベーションに戻りやすいだろう、と思って書き始めた。

では、まだまだ序章だけですが、雰囲気だけでも楽しんでいただけたらと。

雰囲気的には中世中華風ファンタジーです。

《第零章》

「どうか間に合ってくれ」
 一群となって馬を駆るその先頭で、軽装ながらも拵えの良い甲冑に身を包んだ者が呟く。
 その言葉は雷鳴のような馬蹄の轟きに掻き消されたが、その思いは誰もが共有しているのだろう。鎧や武器に統一性はないが、その表情は一様に焦りの色が濃い。


 先頭をひた走る横に、一人の偉丈夫が巧みに馬を操って並ぶ。
「兄者、あまり無理をなさらぬ方が」
 背には長大な矛を背負い、纏った鎧には無数の傷が残るその姿は、まさしく歴戦の戦士のもの。だが、厳ついとも言えるその顔は、身なりの良い彼の身を案じてか居並ぶ者よりも曇っている。


「今無理をせずして、何時無理をする。私たちの存在意義はそのためにあるのだ」
 激しく揺れる馬上にあり、なおかつ轟音とも言える馬の一群による蹄音に掻き消されることなく、良く通る声で自らの存在意義を主張する。その声は男としてはやや高かったが、華奢にも見える体を思えば、その高さにも納得はいく。
 主張をする声を支えるのは、彼の心の在り様なのだということは、決意を秘めた目を見れば明白だった。
「わかりました。しかし、絶対に無茶はしないでください」
 なおも身を案ずる偉丈夫に対して、兄者と呼ばれた者はくどいとばかりに馬に鞭を入れて速度を上げて引き離した。


 まっすぐに前を見据える瞳に映るのは荒涼とした大地であり、目的である小邑はまだ見えない。



《第壱章》

 清香(せいか)帝国の帝都より離れた中規模の邑、李川(りせん)にはいつになく多くの人が集まっていた。
 馬を駆り、武装した屈強な男の姿が多く、邑に住む民は不安がったが、彼らの掲げる旗の印を目にするや、態度は目に見えて安堵の色を強くした。


 そんな屈強な男たちの一団は馬を厩に預け、とある人物の下へと集まっていく。
 その中心となっている拵えの良い軽装の甲冑に身を包んだ人物は男たちがあらかた集まったのを確認すると、
「私たちはこれよりここ李川に駐留し、情報を集める。無論、私たちがここにいる以上、紅紗(こうさ)の奴らに好き勝手させることを見過ごすつもりはない。近隣に出没の報あれば、ただちに打って出る。よいな?」
 彼の声はとりわけ大きいという訳でもなかったが、芯の通ったその声は男たちの耳にしっかりと聞こえ、そして、野太い声で応の一声が返る。それを聞いて中心の人物は微笑みを浮かべ、しかっりとした頷きを見せた後、駐留に当たっての支度を行うように命じた。


 めいめいに散っていく中で、一際体躯の良い偉丈夫だけがその場に残った。彼は背中に背丈に見合った長大な矛を背負い、一見して武人とわかる風貌だ。
「白扇兄者。俺たちはどうします?」
 武人は拵えの良い鎧を纏った者、白扇を兄者と呼ぶ。白扇――姓を児辰(こしん)という――は武人の顔を見上げ、
「そうですね、駕刻。まずは私たちも宿を探しましょう。その後に、ここの代表者に目通りします」
 治尚(ちしょう)駕刻(がこく)は黙して頷き、先に歩き出した白扇の後を付いて行く。


 李川の邑は帝都や大邑のような賑やかさはないものの、道行く人々の穏やかな表情と身なりの程度から、かなり安定した執政がなされていることが窺えた。ひとえに、邑の政治を執り行う政官、とりわけ邑主が人格者だということだろう。
 しかし、この邑こそ安定した暮らしを実現できているが、近隣の邑もそうであるとはとても言えず、最悪な場合、飢餓や疫病の類で邑が滅びることも多々ある。


 また、その安泰を妬む者がいるのも確かなことだ。そんな者らが徒党を組み、賊となって村や邑を襲うことも多くなっている。そんな情勢の中で、官軍もただ黙っている訳ではないが、動きの鈍さと神出鬼没ともいえる賊に対する決定打のなさゆえに、手をこまねいている。
 そして、その賊の中で昨今猛威を奮っているのが紅紗の連中だ。紅紗は当初こそ官軍の手の届かない辺境における義勇軍だったのだが、脱走兵や傭兵崩れが集まるにつれ、組織の精神は段々と曲がり始めた。そして、数年前に炉火と呼ばれるものがその頭となって以降、まさしくただの賊と成り果てた。それ以来、いくつの村や邑が襲われ、何百人もの人が彼らの欲望の犠牲となった。


 白扇は賊が我が物顔で清香の土地を闊歩する彼らに対抗すべく、有志を集めて義勇軍を立ち上げた。旗印には白扇の名に含まれる『扇』を用い、鮮華と名乗っている。立ち上げから一年と少し経った今、官軍やその他の義勇軍と協働して賊を討ち、民を守ってきた彼らはまさしく英雄と言えた。
 そして、今現在白扇たちが李川の地に来ているのは、この邑の周辺で紅紗と思われる者たちの目撃情報があったからだ。


 白扇は駕刻を共連れに歩き、宿屋を探そうと辺りを見回していると、鮮華に属する男の一人で李川の周辺を哨戒していた者が駆け寄ってきた。
「児辰殿、たった今聞いた話ですと、数日前に北の李篭を襲った紅紗はその後西へと進路を取ったそうです」
「北の李篭? 数日前だとして今から行ってもすでにいないだろう。李篭の西にはなにがある?」
「この周辺の状況はまだ詳しくわかりませんが、紅紗が無駄な進路を取るとは考えにくいのも事実です」
「確かに、な。そこの男、少し良いか?」


 白扇は通りを歩いていた平民の男に声を掛けると、無造作に歩み寄る。男は突然のことに面食らったようで、
「い、いきなりなんだ?」
 と、落ち着きなく辺りを見回しながら答えた。白扇はその様子を疑問に思ったが、今はそれを詮索する時ではないと判断し、李篭の西になにがあるかを問うた。すると、彼は白扇の顔を直視しないまま、
「た、確か、李篭の西には小邑がある。名前はなんだったかな……えっと、ああそうだ。李庵だ。うん、李庵。そこがどうかしたのか? 多分、行ってもなにもないぞ」
「いや、この周辺のことを知りたかっただけだ。情報感謝する」
「い、いや、いいさ。知ってることを喋っただけだから」
 男はそそくさとその場を後にしたが、少し離れた位置で立ち止り、白扇の顔を何度も見返しては首を傾げていた。


 白扇はそんな彼の行動には気付いていなかったが、その男の態度も頷けるものだ。白扇は軽装とは言えしっかりと甲冑を身に着けていたが、その体はどちらかというと華奢であるし、顔立ちは化粧をすれば女に見えなくもないほどである。
「兄者」
 駕刻が言葉少なに白扇を促す。彼はそれへ頷きを返し、報告をしてきた男に人を集めるように命じ、自らは馬を繋いだ場所へと走り出す。


 程なくして再集合した男たちの表情は険しい。到着早々再び呼び集められたのだ。何かがあったと考えるのが自然。そんな彼らへ白扇は、
「数日前、ここより北の李篭にて紅紗の目撃情報があったようだ。彼らはその後進路を西に取り、李庵という小邑の方へと向かっているらしい」
 そこでいったん言葉を切り、白扇は胸に手を当ててから、
「李庵の状況は絶望的だ。しかし、今からでも追えば、足取りは掴めるものと考える。足の速いものを選抜し、残り半数をここ李川に駐留してもらおうと思う。各隊長は部下を選抜し、すぐさま出立の準備をしてほしい」
 白扇の声をかき消すほどの大きさで応答の声が返る。それへ満足げな頷きを返し、駕刻と共に出立の準備を始めた。


 鮮華の構成員は白扇を盟主と置き、駕刻を総隊長、そして、その下に分隊を指揮する分隊長がいる。分隊は今のところ三つに分かれており、それぞれに騎兵と歩兵を有するが、各隊でその比率は異なる。
 騎兵戦力を多く有し、戦場での機動力を生かす第一分隊は佐料(さりょう)鈴(りん)という女性が分隊長を務めている。もともと別の義勇軍として活動していたが、白扇と通じるところがあり、今では肩を並べて戦っている。


 歩兵を主とする第二分隊は袁(えん)理督(りとく)が率いている。もともとはとある邑で政官をしていたが、邑の財政が傾き、その役職を罷免されたところを結成直後の鮮華が拾ったのだ。聡明な男で、今では鮮華の財務を取り仕切り、軍師としてもそれなりに優秀である。


 第三分隊は公(こう)修刑(しゅうけい)が率いているが、この分隊は少々特殊性が強い。第二分隊と同じく歩兵が多いのだが、その役目は主に諜報である。先ほど報告をしてきた男もこの分隊の者で、斥候や敵地への単独潜入を得意とした特殊な技能を持った者が多く属している。
 このような者たちを囲っていることこそが鮮華の特殊性である。


 白扇が支度を済ませて馬にまたがると、すでに第一分隊の者を中心として、およそ百五十人が準備を済ませ、白扇の命を待っていた。
「白扇、号令をお願いするわ」
 鈴に促がされ、白扇は腰から采配を抜き放ち、天に掲げた。
「これより紅紗の足取りを追うため、李庵の地へと向かう。可能ならば、李庵の地が紅紗の牙にかからぬうちに辿り着きたい。では、参るぞ!」
 采配を振り下ろすと、進路を北西に取る。先頭を白扇が走り、その横に駕刻が付ける。その反対側には鈴と修刑の弟で第三分隊の小隊長である蒼刑が並び、道を知らせる。すでに蒼刑は近隣の地図を入手していたようで、馬を駆りながら、手元の繊維紙に目を走らせている。
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コメント

No title

続きがすごく気になります!
 楽しみにしてますね☆

移 慧さんへ

こんばんは!

コメントありがとうございます。

プロットもなにも書かずに書き始めたので、途中大脱線しそうな予感はありますが、最後まで書き切りたいと思います。

続きは近日中にアップさせていただきますので、これからも応援してくださると嬉しいです。

グランベル魔法街へようこその方もだいぶ書き進んできたので、そちらも近日中にアップさせていただきます。

No title

 こんばんは。
中華か… あの広大な大地を駆け抜ける小説は 魅力的ですよね
でも 僕には 知識不足で書けない分野だな。
続き 楽しみにしています。

ウゾさんへ

こんばんは。

コメントありがとうございます。

三国志系の物語読んでたら、なんか無性に書きたくなったので。
まだまだ知識不足な部分はありますが、まあ、"中華風"なので、厳密に史実に沿わなくていい分気楽ですが、地理関係は少々苦労します。

では、続きは頑張って書いていきたいと思いますので、よろしくです。
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