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今日はもう寝る……

    2012-05-04(Fri)

寝る。
もう寝る。

頭痛いし、お腹も痛い。
疲れたし……

明日はもう少しましな更新をしようと思うですよ。

ではでは、今日はこれにて。

続きはとある小説の没シーン集から抜粋。
興味あればどうぞ。


 静かな風見の声が聞こえたと同時、彼女の姿が掻き消えた。そして、一瞬の後には目の前に迫っている。

「破ッ」

 短く、鋭い呼気と共に、鞘に収まったままの剣が右から襲ってくる。

「くっ……」

 慌てて、武器の軌道を見極め、右手の刃で防御した。だが、移動の勢いを上乗せされた威力は半端なものじゃなかった。体ごと吹き飛ぶ。

「まだまだッ!」

 自ら吹き飛ばした祐樹を風見は更に追う。

「クソ」

 祐樹は悪態を吐き、空中で体勢を整える。運動能力は継約前に比べて、格段に上がっている。

 風見は目前まで迫っていた。回避は出来ない。

 祐樹は自分に言い聞かせた。焦るな、と。空中にいる自分は剣を振るった所で威力はない。ならば、

“――あまねく大気。我が言霊の元に集いて、無限の刃となれッ!”

 とっさに唱えた。瞬間的に紋章が描かれ、封力が収束する。しかし、慣れない祐樹にとって、収束は時間のかかる作業だった。

 風見の二撃目が放たれた。収束が間に合わない。祐樹は収束しきらないまま、封力を解き放った。刃程の鋭さを持たない空気の塊が無数に風見へ襲いかかった。

「む」

 風見は唇を曲げ、鞘に収まったままの刀で空気の塊を薙ぎ払い、切っ先が祐樹の前髪を掠めた。

 祐樹は着地と同時、地面を蹴ってさらに距離をとる。風見は追って来なかった。

「抜かないのか?」

 祐樹が問うと、風見は薄く笑い、

「抜いてもいいよ?」

 金属音がして、刃が僅かに覗く。

「今度は避けれるかな?」
「さあ、な」

 祐樹は身を低く構えた。祐樹の短剣は相手の長刀よりもリーチに劣る。

 とん、と風見が軽く一歩を踏み出す。しかし、起こった現象は見た目をことごとく裏切った。風見の足が踏んだ地面が陥没し、亀裂が走る。

「なっ……」

 思わず絶句してしまう。

 風見は刃をゆっくりと鞘から引き抜く。

“――我望むは灼熱。我が言霊の導きにより、空焦がす息吹となれ”

 祐樹が唱えると、紅い封力が右手にを中心に収束し、刃に焔が纏わりつく。

 風見が刃を抜き終えた。身を低く、体が捻られる。まるで、その姿は引き絞られた弓のようであった。

 祐樹は燃え盛る焔を意識して、左手をすぐに動かせるようにする。

“――疾風”

 風見は唱えると同時、地面を蹴った。その背後で風の爆発が巻き起こり、風見の体が更に加速した。まさしく『疾風』。しかも、風の爆発は一度で終わらなかった。連続的な空気の爆発が風見の加速を後押しする。

 両者の距離は回避のための猶予ではなく、風見が更なる加速を得るための滑走路に使われた。

 祐樹は避ける事を考えず、真っすぐに風見を見据える。移る景色に色はなかった。余計な情報を排除した視界は苛立つ程にゆっくりだった。風見の動きですら、だ。

「燃えろッ!」

 紅の剣を振るった。焔が放たれ、広がる。そして、祐樹は前に出た。左手を引き、刺突の構え。風見の剣が焔の壁を突き破る。しかし、まだ目隠しの役目は果たしている。

「はっ」

 左手に封力を込めながら、細身の短剣を突き出した。風の刃が追随する。

 風見が焔の中から現れた。しかし、それと同時に彼の長剣と風の刃が交差した。紙の破けるような音が響き、風の刃が四散する。しかし、風見の方も無事とは行かなかった。僅かに剣がぶれ、祐樹はその隙を見逃さなかった。

「どりゃあッ!」

 右手の剣で長剣を上に弾く。

「甘いね」

 真横に圧力を感じた。

「二刀流は君だけじゃない」

 鞘が凶暴な唸りを上げて振り抜かれた。祐樹は左手を回し、細身の剣で防御する。が、勢いは殺せなかった。直撃は食らわなかったが、左手から剣が吹っ飛ぶ。

 祐樹は距離を取ろうとしたが、風見はぴったりと付いて来る。反撃の隙がない。

「まだまだ、本気の一割だよ?」

 余裕の表情で風見が言う。祐樹は唇を噛んだ。

 風見の体が沈んだ。そして、地を這うような動きから、神速の逆袈裟が放たれる。風見の攻撃の威力は腕だけではなく、体全体を使う事によって生み出される。しかし、それがわかった所で、風見の動きを止める以外にそれを防ぐ手はない。

 相変わらず視界に色はない。限界まで引き伸ばされた時間の中で祐樹は思考する。この攻撃を避けるにはどうすればいいのか、と。祐樹と風見の距離は近い。後ろに逃れた所で、長剣の間合いから逃れる事は出来ないだろう。上も同様だ。右は論外。左はぎりぎりかわす事も出来そうだ。だが、第二撃を避ける自信はない。なら、今の攻撃を避けつつ、第二撃の及ばない場所は、前しかない。

 祐樹は判断を下し、前に跳んだ。風見の顔に驚愕が浮かんだ。祐樹は更に風見の肩を踏み台にして跳ぶ。風見がよろけた。

“――我が内に猛りし想いの焔よ。剣に纏い給え”

 空中で体勢を整えながら唱える。一瞬、刀身に文字列が走り、焔が噴き出した。広がった焔は剣を軸に収束し、長大な焔剣を形作る。

 祐樹は足音軽く着地して、焔剣を構えた。一方、風見も体勢を立て直し、両手で長剣を構えている。鞘は手にしていない。見れば、鞘は半ばから折れていた。半分は地面に突き刺さり、もう片方は無造作に投げ出していた。

「なかなかやるね……でも、まだだよ」

 風見の表情から余裕は消えない。

 風見が動いた。まさしく矢。予備動作なしに放たれた攻撃に祐樹は立ち竦み、為す術もなく、迫り来る刃に恐怖を覚えた。強く、死を意識した。

 刃が胸に突き刺さり、異物が侵入してくる。刃は酷く冷たいのに、刺された胸は焼けるように痛んだ。紅い血が飛び散った。

 祐樹は激痛に膝を突く。胸に触れ、

「えっ……?」

 呆然と呟いた。触れた指に血は付いていなかった。顔を上げ、風見のいた場所を見る。まだいる。動いていない。

 しかし、感じた恐怖は本物だった。胸を突き刺した刃の感触も。本当に、幻覚だったのか。

 再び、風見が動いた。距離をことごとく無視した速さ。銀光が舞った。横薙ぎの動き。でも、動けない。避けなければ、死ぬ事は確実なのに、それを上回る恐怖に体が竦む。

 胴が斬られた。熱が走り、命が滔々と溢れ出していく。その感覚があるのに、血はない。

「何だ……これ、は?」

 震える唇で呟いた。理解出来なかった。もう、二度も殺されている。

 もう一度、風見が動いた。向かって左上から軌道。袈裟斬りだ。もう、嫌だった。死ぬのは怖かった。立ち上がって、闇雲に剣を振り回した。しかし、風見には掠りもしなかった。巧妙に避けた訳ではなく、ただ単に当たらなかった。

 再び銀光が走った。左肩から右の脇腹まで一直線。斬撃は骨まで断った。

 祐樹は剣を取り落とした。制御を失った封力が散り、焔が消える。そして、その場に膝を突く。肩を抱いた。怖かった。寒かった。

「違う」

 祐樹が呟いた。声は弱々しい。今のは風見の発した本気の殺気だ。その気だけで相手を威圧し、戦意を失わせる。

「恐怖は……乗り越えるものじゃなくて……克服するものじゃなくて……」

 祐樹の手が剣を掴む。ゆっくりと顔が上がり、風見を見る。

「恐怖は、乗り越えるんじゃなくて、それを手に、前に出なきゃいけないんだ」

 遠くに転がる紫の剣が一度その構成を解き、祐樹の手の中でもう一度構成される。それを支えに立ち上がった。

「護る者のために、負ける訳にはいかないから。護るって、あいつに誓ったからッ!」

 祐樹の双眸が風見を睨んだ。

“――Unizon!”

 両の刃を交差させた。目を焼く程に封力が眩く光り、それが晴れた時、祐樹の手にあったのは一振りの紅と紫の大剣だった。

“――閉ざされた胸の内 宿るは悔恨
  護りの誓い 叶わず
  失った命の重みに心は軋む
  想い重くのしかかり 心潰す
  夜明けの空 叫びは
  虚空に吸い込まれ 儚く散る
  今魂の慟哭 謳にして
  胸の内滲む紅 破壊の焔斧に
  荒ぶ想い 蹂躙の嵐蹄に”

 祐樹の歌声が響き渡る。彼を中心に莫大な封力が生まれ、渦巻く。徹底的な破壊の力が編まれていく。渦巻いていた封力が大剣を中心に焔と風となって舞う。祐樹が大剣を振り上げた。

 大気の摩擦により、火花が散る。焔が大気を焼く。十分離れている筈の風見にもそれは押し寄せる。嵐の目のような祐樹の位置は凄まじい量の封力が吹き荒れている。

“――響け”

 祐樹の詠唱が響く。焔が燃え盛る音と風の唸りが騒々しく聞こえる中、祐樹の声は響く。いや、轟くと言った方が正しい。

 大剣が振り下ろされた。

“――終焉の鎮魂歌ッ!”

 紅の焔と紫の嵐が風見に襲い掛かった。轟音。地面を抉り、迫る濁流のような焔と嵐を前に、風見が右手を差し出した。

 風見の姿が飲み込まれたと思った途端、

“――虚無”

 快音が耳を打った。一拍遅れて、全ての音が消失した。そして、消えたのは音だけじゃなかった。焔も嵐も、跡形もなく消え去っていた。

 何が起こったのか。祐樹は渾身の一撃を放った体勢から動けずにいた。理解出来なかった。思い出したように吹く風に髪を靡かせながら、祐樹は風見を見た。

 風見は目を閉ざし、右手を前に出したままだった。肩が上下している。

「俺の負けだ」

 祐樹の言葉に、風見は唇を持ち上げ、

「引き分けの気分だね」

 息も荒く言った。祐樹も疲弊していたが、それ以上に風見は疲弊して見えた。祐樹は大剣を杖代わりに体を支えている。

「久しぶりに死ぬかと思ったよ……」
「その割に、余裕そうだったな」

 祐樹は立っている事が出来ず、膝を突いた。風見も目を開き、右手を下ろすと、崩れるように倒れ込んだ。

「余裕な訳……ないだろ?」

 風見は力なく笑った。

「そうだな……」

 大剣が光の粒子となって散った。封衣も消える。制服姿に戻った祐樹はゆっくり起き上がり、足で立つ。

「我が事ながら、派手にやったな……」
「派手過ぎるよ……地面抉れてんじゃん」

 風見は起き上がるとその場に座り込んだ。祐樹は風見に近付いた。

「ここまで出来るのがわかって満足だ」
「もう止して貰いたいものだね……」

 そう言いながらも、風見の表情は楽しげだ。

 莫大な量の封力を完全に制御してみせた祐樹と、絶対的な破壊を一瞬にして消し去った風見。

 祐樹は自身の力に驚きながらも、それ以上にそれを上回って見せた風見に素直な賞賛を送りたかった。

「まだまだ俺じゃ敵わないみたいだな。本当にすごいよ、お前は」
「褒めたって、これ以上何も出ないよ。というか、これ以上搾り取らないでくれ」

 笑いながら風見はいい、差し出した祐樹の手を借りて立ち上がった。

「でも、君だって初心者でここまでやるのは正直すごいと思うよ。他の人ならこうはいかないんじゃないかな」
「おだてると調子に乗るぞ」
「少しくらいならいいと思うよ」

 祐樹と風見は健闘をたたえ合い、固く握手をした。
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