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グランベル魔法街へようこそpart0 序章

    2012-04-02(Mon)

今になって序章を公開。

乞うご期待?





“――四元素が一つ、土より生まれし巌(いわお)の巨塊(きょかい)、高天より降り来たりて、気高き者を地に臥せよ”

 濃紫の髪を持つ少年の淀みない詠唱。右手に嵌めた指環から溢れ出た光は宙に複雑な魔法陣を描き出す。

 少年は満身創痍だった。左腕はおかしな方向に折れ曲がり、体の各所に裂傷や打撲、火傷がある。

 少年と相対しているのは赤、黄、青、緑の二対四色の瞳を持つ巨大な竜。黒い鎧のような鱗を纏い、二本の脚で地を踏みしめている。前脚はない。翼も飛ぶための機能は有しておらず、しかし、柔軟に動くそれは腕の代わりをなす。

 竜が吼える。その体にまとった鱗にはすでにいくつもの亀裂が走り、一部は砕け、ひしゃげていた。体液をまき散らし、それでもなお猛々しさを失わない。

 少年もまた、吠えた。声を上げ、右腕を振り上げる。彼の表情は険しく、おびただしい出血により、顔色は蒼白を通り越して土気色だ。

“穿て、巌よ。Meteorite!”

 空中に巨岩が現れ、勢いよく竜へと向かう。

 竜はそれに気が付き、回避の動きを取ろうとする。しかし、それを許す少年でもなかった。

 炎弾や氷弾、そして雷撃や石つぶてが乱れ飛び、竜の足を撃つ。

 動作の起点を潰された竜は動きをせき止められ、そして、その胴へ目がけて巨岩が叩きつけられた。

 爆発するような音と竜の咆声が響き渡り、激突の衝撃で砕けた巨岩の欠片が飛び散る。

 辺りは巻き上がった土煙に覆われ、視界を失ったが、

「まだ、か……」

 少年は苦々しく吐き捨て、そして、まだ動く右手を再度振るう。

“――負の理に従い、狂気を奉るメテンティス。彼(か)の鑓(やり)は大いなる者の魂さえも穿ち貫く”

 血を吐くような声で紡がれる詠唱。指環の軌跡が宙に描く魔法陣は、描かれたそばから黒々と闇の色を湛え、見るものに恐怖を与える。だが、ここに傍観者はない。

 叩きつけるような動きで刻まれた魔法陣は黒い光を纏い、その中心から闇の杭を生み出す。

 その間に竜は翼を動かして土煙を払う。現れた姿は無事とは言い難い。片方の翼は根元から千切れ落ち、背中の鱗はほとんどが砕け剥がれていた。

“――其(そ)は死を齎(もたら)す為に在れ。Hastam mortis!”

 闇の杭が放たれる。

 少年は声の限りに叫んだ。魔素を全力で注ぎ込み、幾重にも加速魔法を掛けられた杭は一瞬という時間で竜に辿り着き、

『――ッ!』

 耳をつんざく咆哮が竜を刺し貫いたことを告げる。

 だが、杭の動きはそこで止まらなかった。杭は突き刺さった状態から解けていき、一つの魔法陣を形作る。

 鼓動のような脈打ちを一つ奏で、魔法陣は暗く輝く。

「境界は分かたれる」

 少年の声は天を引き裂き、地を揺るがすような竜の叫びの掻き消される。その声は長く続き、しかし、ふいにぱたりと止む。

「……済まない」

 強張っていた竜の体から力が抜け、大地にゆっくりと倒れ伏す。巨体が地に打ち付けられる衝撃で土が舞い上がり、風が起こる。

 その突風に晒されながらも少年は立ちつくし、険しかった表情を悔恨の色に染める。

「済まない」

 再度の呟き。

 氷の色をした瞳の先で、竜の体から小さな光が飛び出る。それは宙を彷徨うように螺旋を描き、そして、少年の方へと一直線に飛んでくる。

「?」

 疑問を浮かべる少年の前で光の玉は竜の瞳と同じ赤、黄、青、緑の色に明滅する。

 少年がそっと手を伸ばし、それへ触れると何かが流れ込んでくる。

 それは意志だった。

『この結晶はお前に託す。お前が認め、我に相応しいと思った者に授けてくれ』

 そう、意志は告げていた。

「…………」

 少年は唇を引き結ぶ。竜からの遺言。自分が殺した者から託された言葉。

 受け取る資格があるのか。いや、殺したからこその責務か。

 やがて光は薄れ、手の中にコイン大の透明な結晶が残った。結晶の中で、四色の光が鼓動のように明滅する不思議なもの。

 竜種の精霊が残した、意志の結晶。

 少年は右手でそれを握りしめ、胸に抱く。言葉はなく、ただ意志だけを瞳に宿していた。
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コメント

No title

カロンは何者なのかと問いたくなるね。
突然、それだけの魔力を身につけたわけでもないだろうし。
非常に謎めいた人物だけは確かだね。

ぴゆうさんへ

こんにちは。

> カロンは何者なのかと問いたくなるね。
> 突然、それだけの魔力を身につけたわけでもないだろうし。
> 非常に謎めいた人物だけは確かだね。
そうですね。
彼はいったい何者なのか。
それはもちろんこれから明かされることですが、それまで少々お待ちいただければと……

コメントありがとうございました。
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